原子力防災を担当する小泉環境大臣は、被ばくによる甲状腺のがんを防ぐ効果があるとされているヨウ素剤について、原発から5キロから30キロ圏内の住民にも事前配布を推進したいという考えを示しました。
ヨウ素剤は、原子力発電所などで事故が起きた場合に服用すると被ばくによる甲状腺のがんを防ぐ効果があるとされていて、福島第一原発の事故を教訓に原発から5キロ圏内については、すべての住民を対象に事前配布することが指針で定められています。
小泉大臣は4日の閣議のあとの記者会見で「5キロから30キロ圏内いわゆるUPZにおいて、緊急配布の負担を考慮した場合、事前配布によって避難などが円滑になると想定される住民に対しても、ヨウ素剤の事前配布を推進することにした。役場や保健所などの公共施設で保健師などによる配布も推進していきたい」と述べ、今後、具体的な検討を進めていく考えを示しました。
そのうえで「福島の複合災害のときのことを思い出せば、万が一の時に必要なタイミングで飲んでいただけるような提供体制が整っているのだろうかと問題意識を持っていた」と話しました。
独自判断で事前配布の自治体も
独自判断で事前配布の自治体も
ヨウ素剤は原子力発電所などで事故が起きた場合に服用すると、被ばくによる甲状腺のがんを防ぐ効果があるとされています。
しかし、この薬は9年前の福島第一原発の事故の際、服用に関する情報が錯そうするなどしたため、住民に十分に行き渡りませんでした。
このため、国は原発で重大な事故が起きたときに直ちに避難する必要のある原発から主に5キロ圏内の住民を対象に事前に配るようにルールを見直しました。
一方、5キロから30キロ圏の住民については、重大な事故が起きた際にすぐには避難をせずに住宅などの建物の中に退避し、必要に応じて避難することになっています。
このため事前に配布する対応は取られていませんが、自治体の中には独自の判断で住民の要望に応じて事前に配っているところもあります。
ヨウ素剤の事前配布の方法は、処方の注意点などを理解して正しく服用してもらうため、原則として医師や薬剤師による説明会に参加した住民に配られることになっています。
これについて自治体などからは「説明会の開催も医師を集めるなど簡単ではなく、住民側も仕事などで参加できない人も多い」などと、より効率的な配布方法を求める意見もあがっています。【NHK】