関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の運転差し止めを京都府の住民が求めた仮処分申請の即時抗告審で、大阪高裁(山下郁夫裁判長)は30日、住民の抗告を棄却した。
運転差し止めを求めていたのは、大飯原発から南西に約50キロ離れた京都府南丹市の男性(77)。主な争点は、原発の安全対策を講じる際に想定する「基準地震動」(最大の揺れ)や、それに基づいた安全性審査が適正かどうかだった。
男性側は、原子力規制委員会の委員長代理として基準地震動を審査する責任者だった島崎邦彦・東大名誉教授(地震学)が、2014年の規制委退任後に「大飯原発の基準地震動が過小評価されている」と指摘したことを根拠に安全性を欠くと主張。だが、昨年3月の大阪地裁決定は、基準地震動の計算式に使われる断層面積の数値について「過小評価のおそれを避ける方策が一定程度とられている」として申し立てを却下した。
男性側は不服として即時抗告。高裁の即時抗告審では「現在の計算式で過小評価される程度は桁違いに大きく、規制委の審査では過小評価のおそれを回避できていない」と主張。地震学の権威である島崎氏に対する専門家の反論を関電側は提出しておらず、「裁判所は島崎氏の指摘を否定できないはずだ」と訴えた。
一方、関電側は計算式の妥当性は多方面からの検証で信頼性が確認されているとしたうえで、「島崎氏は不合理な値を計算式に使うことで過小評価になると指摘している」などと反論していた。【朝日新聞】