四国電力伊方原子力発電所3号機(愛媛県伊方町)から50キロ圏内に住む山口県東部の島の住民3人が、四国電に運転差し止めを求めた仮処分申請の即時抗告審で、広島高裁(森一岳裁判長)は17日、住民側請求を認め、運転を差し止める決定をした。四国電は「到底承服できない」として不服を申し立てる方針。
東京電力福島第1原発事故以降で原発の差し止めを認める司法判断は5件目。伊方3号機は現在、定期検査で停止中で、四国電は4月27日に営業運転再開を予定していた。仮処分は直ちに効力が生じるため、今後の司法手続きで覆らなければ当面は運転を再開できない見通し。電力会社の経営や国のエネルギー政策に影響が出る可能性がある。
即時抗告審では原発からどの程度の距離に活断層があるかや、約130キロ離れた熊本県の阿蘇山が噴火した場合の影響などが争点となった。
森裁判長は決定理由で、原発の近くに活断層がある可能性を否定できないにもかかわらず「四国電は十分な調査をせず、原子力規制委員会も稼働は問題ないと判断した」と指摘。阿蘇山についても「一定程度の噴火を想定すべきだ」として、その場合でも火山灰などの量は四国電の想定の約3~5倍に上ると判断し「四国電の想定は過小だ」と結論付けた。
森裁判長は運転差し止めの期間について、山口地裁岩国支部で係争中の差し止め訴訟の判決言い渡しまでとした。この判決の期日は決まっていない。
今回の即時抗告審の一審に当たる2019年3月の山口地裁岩国支部決定は「原発の運用期間中に阿蘇カルデラの巨大噴火が起きる可能性は小さい」などとして、住民側訴えを退けていた。
伊方3号機を巡っては17年12月に広島高裁が阿蘇山の大規模噴火の可能性を理由に運転差し止めを命じた。その後、同高裁での異議審で一転して運転を認める決定が出たため、18年10月に再稼働した。【日本経済新聞】