東京電力福島第一原発の事故をめぐり、福島県から山形県に避難した201世帯734人が東電と国を相手取り、損害賠償を求めた集団訴訟の判決が17日、山形地裁であった。貝原信之裁判長は、多くの原告について「支払われるべき慰謝料は東電がすでに弁済した額を超えることはない」として、5人に計44万円を支払うよう東電に命じるにとどまった。国の責任については大津波を予見することは可能だったと認める一方で、「事故防止の合理的な規制ができたとは言い難い」として認めなかった。
今回の訴訟の原告数は、福島地裁で起こされた訴訟を除けば最大規模で、計約80億7千万円の賠償を求めていた。自主避難者が約680人と大半を占めた。仕事がある夫を残して母と子だけで避難した「母子避難者」の原告が多いことも特徴だ。
福島第一原発の事故を巡る集団訴訟は全国で約30件起こされており、一審判決は今回が13件目。これまでの12件はすべて東電の責任を認め、今回より多額の賠償を命じていた。また国が被告となった9件のうち、6件は国の責任も認めていた。
山形県は一時、原発事故による福島県からの避難者を、全国最多となる約1万3千人受け入れていた。現在も約1600人が県内に避難している。
訴訟では、原発事故につながるような大津波が来ることを予見し、国や東電に対策がとれたか、などが争点になっていた。(宮谷由枝)
東電「心からおわび」
判決を受け、東電は17日、「福島県民の皆さまをはじめ、広く社会の皆さまに大変なご迷惑とご心配をおかけしていることについて改めて心からおわび申し上げます。判決については今後、内容を精査し、対応を検討して参ります」とのコメントを出した。
また、原子力規制庁も「判決で国の責任はないとの主張が認められたと聞いています。規制委としては、福島第一原発事故を踏まえて策定された新規制基準への適合性審査を厳格に進めていくことにより、適切な規制を行ってまいります」とコメントを出した。【朝日新聞】