関西電力の役員ら20人が福井県高浜町の元助役から金品を受領した問題で、関電は2日午後、社内調査報告書を公表した。受領の総額は3億1845万円相当で、豊松秀己元副社長ら2人がそれぞれ1億円超に当たる現金などを受領していた。八木誠会長と岩根茂樹社長は同日の記者会見で謝罪したが、ともに辞任を否定した。電気事業連合会会長など社外の要職も続投する意向を示した。
金品受領に加え、消極的な情報公開などその後の対応が関電への不信を招いており、各地での原発の再稼働などへの影響を懸念する声も上がる。
関電は今後、第三者による調査委員会を設置して報告書の再検証、原子力や他部門の調査を行い、年末をめどに調査結果をまとめる方針だ。
同日の会見では2018年9月25日付で行った社内処分も明らかにした。八木会長と豊松元副社長が報酬月額の2割を2カ月、岩根社長は2割を1カ月返上する減給処分で、1億円超を受領した鈴木聡常務執行役員など3人は厳重注意だった。
報告書によると、受領した金品のうち現金は約45%を占める1億4501万円で、返却をしていない金品は計3487万円相当だった。
金品を渡していたのは、高浜原子力発電所の立地する高浜町の元助役、森山栄治氏(今年3月に90歳で死去)。06~18年まで岩根社長ら20人が現金や商品券、金貨などを受け取っていた。
氏名が公表された12人のうち11人は受領時、各原発の統括や地域との調整を担う原子力事業本部や高浜原発に所属。八木会長や豊松元副社長は本部長を務めていた。
森山氏は1977~87年まで高浜町の助役を務めた。報告書によると、高浜原発3、4号機の建設で誘致や地域のとりまとめに関わった。その後も関電幹部に対する影響力を誇示しようとしたという。
関電は原発事業に不可欠な地元の理解を得ようと、有力者である元助役との良好な関係を維持することを優先。
2011年の東日本大震災後、原発の早期の再稼働が課題となる中、元助役への対応の頻度は増した。
報告書は役員らが返却を申し出ると、元助役は威圧的な言動で拒絶したため、保管し続けたとしている。その上で、工事発注額が社内ルールに基づき適正だったとし、「工事発注に不正は無かった」と結論づけた。
金品受領は、高浜原発関連工事を受注する建設会社「吉田開発」(高浜町)に対する金沢国税局の税務調査で発覚。元助役は、顧問を務めた同社から約3億円を受領したことが確認された。さらに、元助役は関電の役員らに金品を渡しており、「原発マネー」の還流を疑わせる不透明な資金の流れがうかがえる。
会見で金品の資金の原資について、八木会長は「金品の出所がどこにあるかは全く承知していない」と否定した。
9月27日の臨時記者会見では、11~18年に役員ら20人が約3億2千万円相当の金品を受領または保管したと発表。八木会長や岩根社長を除く18人の氏名など多くの事実関係は、プライバシーなどを理由に非公表とした。こうした対応に、政府や自治体などから批判が噴出、情報公開を強く求める声が相次ぎ、関電は方針転換を迫られた。【日本経済新聞】