関西電力役員らの金品受領問題は、原子力発電所の再稼働に影を落とす。関電は4基の原発が再稼働し、残る3基を2021年までに再稼働させる方針だ。今回の問題で世論が硬化すれば、地元同意の取り付けが遅れかねない。他の電力会社は自社の再稼働に影響することを警戒している。
関電の岩根茂樹社長は27日の記者会見で「(金品受領問題に絡み原発関連工事の)発注プロセスは適切だった」と話した。八木誠会長とそろって報酬を返上すると明らかにしたが、2人の引責辞任を問われると「再発防止策を確実に実施していきたい」と否定した。
関電は東日本大震災後に原発が止まり、12年3月期から4期連続で最終赤字を計上。17年から18年にかけ4基を再稼働し、業績が回復してきた中で今回の問題が発覚した。今後は高浜1、2号機(福井県高浜町)など3基の再稼働を目指すが、いずれも運転開始から40年を超え、もともと不安視する声があった。再稼働は福井県知事の同意が必要で、地元が関電への不信を強める可能性がある。
関電の株価は一時前日比112円50銭(8%)安の1281円と大幅に続落した。ほかの電力株にも売りが波及し、中部電力は3%安となった。
関電には他電力からも批判の声が出ている。社会常識を上回る多額の金品を預かったことに、東京電力ホールディングスの幹部は「一線を越えている」と指摘する。関電の岩根社長は大手電力でつくる電気事業連合会の会長だ。ある電力幹部は「関電の社長・会長が辞任しなければ、他社も自治体との癒着を疑われ、原発再稼働がままならない」と厳しい表情を浮かべた。【日本経済新聞】