関西電力美浜原発での重大事故を想定し、三十一日に行われた県原子力総合防災訓練では、今回初めて嶺北地域の住民が避難訓練に参加した。美浜原発近くの半島では、ヘリコプターや船舶を使う場面も。昨年の訓練で避難住民への情報提供が課題となったため、今回は訓練用に原発や避難場所、道路の状況がリアルタイムで分かるウェブサイトが用意された。
訓練で初めて実施された嶺北地域の住民避難には、越前市、南越前町、越前町の三市町から二百九十人が参加した。実際にバスなどで嶺北の受け入れ自治体に移動。高齢者や外国人への対応を課題に挙げる声もあった。
広い範囲が三十キロ圏内にすっぽり入る南越前町では、十地区の住民九十二人が避難した。バス三台に分乗し、午前九時半に避難先の永平寺町上志比小学校に向かって出発。道中では安定ヨウ素剤の配布のほか、スクリーニング・除染の訓練もあり、参加者たちは戸惑いながらも真剣な表情で取り組んでいた。
バスはいずれも一時間半~二時間ほどで上志比小学校に到着。南越前町甲楽城(かぶらき)地区の前区長、丹羽順一さん(68)は「避難はバスに乗っている時間がほとんどで、大きな不安はなかった」。足腰の弱い高齢者が避難訓練に参加していないなど不安材料も指摘し「原発から三十キロ圏に住んでいることを改めて意識できた」と話した。
越前市民は主に坂井とあわら両市に、越前町民は坂井市に移動した。坂井市春江中コミュニティセンターに自家用車で到着した越前市高森町の会社員福岡英樹さん(48)は「国道8号も北陸道もスムーズで、万一の際の行動を確認できた。しかし、原発事故があれば道路渋滞も心配だ」と危惧した。
初めて避難者の受け入れを体験した坂井市の村中秀也・安全対策課長は「避難者の規模によっては、行政は除染の確認と名簿作成で手いっぱいになる。避難者の自助、地域住民の共助も重要になってくる」と実感を話した。
終了後の講評で越前市の奈良俊幸市長は「市内には四千人の外国人が暮らしていて、原子力に関する情報伝達の難しさを痛感した」と話した。今回、外国人の避難は行われなかったが「市がポルトガル語やベトナム語で原発の現状を伝えるのはまったく無理。国や原発事業者の力を借りたい」と課題を挙げた。
大野市の中部縦貫自動車道大野油坂道路の建設用地から出た伐採木が一日、薪材として市民らに無料配布された。通常は処分されてしまう伐採木を有効活用しようと、一七・五トン分が配られた。
和泉地区の用地整備の際に出た伐採木が対象。通常は有料で処分しているが、建設主体の国土交通省に大野市が「市民に提供し、有効活用できないか」と要請。昨年に続き、二回目の配布となった。
配布場所の九頭竜スキー場駐車場(角野)に、ミズナラなどの広葉樹を中心に、長さ二メートルに切りそろえた薪材を軽トラック五十台分準備。事前に申し込んだ市民らが次々と訪れ、積み込んだ。積み込み作業は、用地の整備作業を進める建設会社がボランティアで手伝った。国交省福井河川国道事務所の本田明事業対策官は「地域の皆さんに喜んでいただき、中部縦貫自動車道への関心を深めてもらえれば」と話した。伐採木が出れば来年も提供する。【中日新聞】