東京電力ホールディングスの小早川智明社長は26日午前、柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)の立地先である柏崎市の桜井雅浩市長と会談し、一部の廃炉を検討する方針を伝えた。6、7号機の再稼働の実現後、5年以内に1~5号機から廃炉対象を選ぶ。廃炉計画の策定を求めた市に回答した。将来の廃炉方針を表明して6、7号機の再稼働へ理解を得る考えだ。
柏崎市役所を訪れた小早川社長は「6、7号機が再稼働してから5年以内に廃炉も想定したステップを踏んでいく」と伝えた。1~5号機全ての再稼働を目指すわけではないとの考えを明らかにし、少なくとも1基以上の廃炉を検討する。
これに対し、桜井市長は「できる限りの案を出していただいたことは評価する」と話した。今後検討を重ねて、東電の回答を受け入れるかを判断する。
桜井市長は2017年6月に6、7号機の再稼働を認める前提として、1~5号機の廃炉計画を2年以内に提出するよう東電側に求めた。19年6月が期限だったが、回答が遅れていた。
東電は福島第1原発や第2原発の廃炉作業を進めるなかで、並行して柏崎刈羽の廃炉を手掛けるのは人手確保や財政基盤の観点などから難しいと判断した。現時点では具体策は示せない代わりに、再稼働を実現できれば、5年以内には経営が立ち直り廃炉が可能になるとの結論を出した。
6、7号機は17年12月に国の安全審査に合格したものの、再稼働の計画は進んでいない。東電は早ければ21年度の再稼働を目指したい考えだ。できる限り早く、地元の理解を得て安全対策工事を本格化させたい構えだ。
東電は原発事故の賠償費用などに使う資金として年5千億円を確保したうえで、毎期4500億円の連結純利益を稼ぐ計画を立てている。電力の全面自由化で顧客離れが進み、19年3月期の純利益は2324億円にとどまっている。抜本的な収益改善には柏崎刈羽の再稼働は不可欠だ。
再稼働には新潟県の意向も必要となるが、花角英世知事は県独自の検証を終えるまでは再稼働の議論ができないとの姿勢を示す。検証作業が終わる見通しはたっておらず、6、7号機の今後の道筋は不透明だ。
【日本経済新聞】