東京電力が、再稼働を目指す柏崎刈羽原発(新潟県)の安全対策費として約1兆1690億円がかかるとする新たな試算をまとめたことが26日、分かった。従来の約6800億円から2倍近くに増加した。テロ対策施設(特定重大事故等対処施設)など原発の新規制基準への対応費用が大きく増えたことが要因。
安全対策費は全国の原発で増え続けており、再稼働が進んでいる関西電力で約1兆250億円、九州電力で九千数百億円となっている。原発再稼働に巨額の費用がかかることが改めて浮き彫りになった。電気料金への上乗せによる、利用者の負担増加も懸念される。
東電は柏崎刈羽原発の七基のうち、一基当たり135万6000キロワットと出力の大きい6、7号機の再稼働を優先。2017年12月に原子力規制委員会の審査で新基準に適合し、現在は対策工事を実施している。
東電によると、航空機落下といったテロに備え、遠隔操作で原子炉などの冷却を維持する施設の新設に加え、構内全体での火災防護対策や液状化対策で費用が増加。過酷事故時に原子炉格納容器の破損を防ぐ排気設備「フィルターベント」二基の設置費も含まれる。
東電は13年7月の新基準施行後、安全対策費を約4700億円と試算。その後、16年12月に約6800億円に見直していた。東電は6、7号機を再稼働した場合、一基当たり年間で700億~1300億円の収益改善効果があると見込んでいる。
東電の担当者は「設備の詳細設計を進め、必要な追加対策を反映した結果、費用が増加した。今後も安全対策を着実に遂行していく」と話している。【共同通信】