東京電力福島第1原子力発電所事故の直後、高濃度汚染水がある原発の現場で作業をさせられ無用の被ばくをしたとして、元作業員の男性(53)が東電や関連会社に計1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福島地裁いわき支部は26日、東電が精神的苦痛を与えたと認め、33万円の支払いを命じた。
原告側は東電などが安全配慮義務を怠ったと訴えたが、名島亨卓裁判長は「健康に影響を及ぼす程度の被ばくをしたとは認められない」と述べ、原告側の主な主張を退けた。一方で、近くの作業員の線量計が警告音を発した後も、高濃度の汚染水がたまっていた現場近くで作業を継続したことに関しては「過度の被ばくを避けるためにも作業を中断して退避すべきだった」と指摘し、原告が健康不安などの精神的苦痛を負ったと判断した。
判決によると、男性は2011年3月24日に第1原発3号機のタービン建屋地下で電源ケーブルを設置する作業に加わり、地下へケーブルを送る作業を行った。この作業による男性の外部被ばく量は約10.8ミリシーベルトだった。【共同通信】