再稼働した関西、九州、四国の電力3社の原発全9基が停止を迫られる可能性が出てきた。新規制基準で義務づけられている原発のテロ対策施設の建設が設置期限に間に合わないためだ。3社は期限の先延ばしを含めた対応を原子力規制委員会に求めているが、委員からは厳しい意見が相次いでおり、3社の見通しの甘さが露呈された形だ。
3社によると、九電川内(鹿児島県)や玄海(佐賀県)、関電高浜、大飯、美浜(いずれも福井県)、四電伊方(愛媛県)の6原発12基で建設工事が遅れ、設置期限を1年~2年半ほど超える見通しという。玄海の超過期間は精査中だという。最も早い川内1号機は来年3月に期限を迎える。
テロ対策施設は、航空機の意図的な衝突の際などに遠隔で原子炉を制御する。当初の設置期限は新基準の施行から5年だったが、2015年に、再稼働に向けた原発本体の工事計画の審査を終えてから5年以内に設置することになった。
建設が遅れた理由について、3社は「安全性を向上させた結果、高度で大規模な工事が必要になった」などと主張。関電の役員は17日の規制委の会合で、「見通しが甘かった」と陳謝しつつ、「土日なしの工事で最大限の努力をしてきた」と理解を求めた。
ログイン前の続き九電によると、川内1号機の場合、原発本体の工事計画の審査が終わったのは15年。同年12月にはテロ対策施設の工事に関する最初の申請をしたが、最後の工事計画が認可されたのは今年2月だった。その間、規制委の審査を受けながら計画の補正を重ねたという。
電力会社の関係者は「ためにするような議論もあり、現実的に間に合わない」と審査の長期化への不満をこぼす。
このまま期限に間に合わなければ、基準に不適合となり、原発の運転停止を命じられる可能性がある。九電の関係者は「(法令には)保安のために必要な措置を命ずることができる、とある。必ず止めるとは書いていない」と、期限の先延ばしなどが認められることに期待を込める。
ただ、会合で委員からは「見通しが甘かったことに尽きる」「申請がすぐに出てこなかった場合もある」と厳しい意見が飛んだ。「期限の見直しは原則的にはあり得ない」と踏み込む委員もいた。今後、規制委で対応を議論するが、3社が求めるような特例が認められるのは容易ではない。
【朝日新聞】