「司法は住民を切り捨てた」―。四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転禁止を求める仮処分申請を却下した15日の山口地裁岩国支部決定に対し、住民側弁護団は「無責任だ」と怒りをあらわにした。広島高裁への即時抗告を検討すると表明した。
「四国電の言いなり。事故が起きたら裁判官は責任を取れるのか」。住民側が山口県岩国市内で開いた報告集会で、河合弘之弁護士は批判の声を上げた。
仮処分を申し立てたのは同県内の島で生活する男女3人。いずれも原発50キロ圏内で、「逃げる場所も時間もない」と主張していた。
決定は「地震との同時災害の場合、速やかに避難や屋内退避をすることは容易でないようにも思われる」と言及。一方で「放射性物質が周辺に放出される具体的危険はない」「事故に至っても全国の実働組織による支援が実施されることとなっている」と判断した。
申立人で上関町祝島の漁業橋本久男さん(67)は「島の状況を見て判断してほしかった。田舎の者は切り捨てられた」と嘆いた。
住民側は愛媛大名誉教授の学説を踏まえ「原発の600メートル沖に活断層があり、詳細な調査が必要だ」と求めていたが、地裁は「音波探査が実施され、存在するとはいえない」などと一蹴。原発から約130キロ離れた阿蘇山(熊本県)についても「原発の運用期間中に巨大噴火が起きる可能性は小さい」と結論付けた。
四国電は滝川重理登(えりと)・原子力部副部長が取材に応じ「引き続き安全運転に万全を尽くしたい」と述べた。
同様の仮処分は大分県の住民も申し立て、今後、福岡高裁で審理が始まる。岩国の集会に参加した「伊方原発をとめる大分裁判の会」事務局の森山賢太郎さん(70)=大分市=は「粘り強く闘っていきたい」と話した。【大分合同新聞】