日立製作所が英国での原発新設計画を巡り、二〇一九年三月期連結決算で最大三千億円規模の損失を計上する方針を固めたことが十一日、分かった。三兆円規模に膨らんだ事業への出資企業を確保できず、事業凍結が避けられないためだ。十七日に開く取締役会で事業凍結と損失計上を決定後、東原敏昭社長が記者会見し公表する。
日立は一八年七月、原発計画から撤退した場合の損失が最大二千七百億円に上ると試算しており、損失額は増加した可能性がある。
日立の英原発子会社「ホライズン・ニュークリア・パワー」は現在も着工の準備を進めており、資金流出を回避するには早期の決断が迫られている。
日立と英政府は、英中西部アングルシー島で原発二基の建設を計画。英政府と英金融機関が約二兆円を融資した上で日立、英政府と英企業、日本企業の三者が各三千億円出資して賄う計画だった。
しかし、日立が出資を見込んだ東京電力ホールディングスや中部電力などは難色を示している。
<日本の原発輸出> 東京電力福島第一原発事故を受け、国内では原発の新設が見込めないため、日本のメーカーは輸出に力を入れている。しかし、三菱重工業がトルコでの原発新設を断念する方向になったのに続き、日立製作所も英国での原発新設計画を凍結することで、原発輸出を柱に据えた安倍政権の成長戦略は曲がり角を迎える。メーカー各社は今後、経済発展に伴って電力需要が伸びているアジアなど新興国への輸出を模索する。【東京新聞】