関西電力が、京都府精華町に大容量の電子データを保存する「ハイパースケールデータセンター(DC)」の建設を計画していることがわかった。今後10年間で1兆円以上を投じる計画の第1弾で、今回の投資額は数百億円規模とみられる。早ければ2026年にも完成する見通しで、「GAFA」と呼ばれる米国の巨大IT企業の利用を見込む。
米DC大手サイラスワンと折半出資した合弁会社が、24年中にも着工する。記憶装置を載せたサーバーや通信機器を置くのは一般的なDCと同じだが、規模が大きく、電力容量は2万キロ・ワット以上となる見通しだ。2万キロ・ワットでフル稼働した場合、1か月の電力消費量は平均的な家庭約5万5000世帯分に相当する。
関電グループでは、すでに通信子会社が5000キロ・ワット程度の小規模なDCを手がけているが、ハイパースケールDCは初となる。
関電は電力を安定的に供給できる強みをアピールし、グーグルやアマゾンといった米IT大手の利用を想定する。電力を賄う手法として、再生可能エネルギーの活用も検討していく。
デジタル化が急速に進む中、DCの需要も拡大している。関電は成長領域と位置づけ、10年間で最大20棟程度のハイパースケールDCの建設を計画している。
デジタル化進展、市場拡大
大容量の電子データが保存できる「ハイパースケールデータセンター(DC)」は、デジタル化の急速な進展に伴って重要なインフラ(社会基盤)となりつつある。今後も市場の拡大が見込まれ、様々な業界の企業が相次いで参入している。
ハイパースケールDCは、大量のデータを処理・保存できる施設だ。数千台規模のサーバーを動かすだけでなく、冷却も必要となり、大量の電力を消費する。電力供給が滞るとデータが消失する恐れがあるため、電力を安定的に供給できるかどうかも重要となる。
関西電力がハイパースケールDCを建設する京都府精華町には、「関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)」の一部があり、大学や研究拠点が集積している。大阪市内や京都市内から近く、内陸部で津波のリスクが低いことも、立地の後押しになった模様だ。
関電はグループ内に不動産開発会社や通信会社を抱え、電力供給に加えて、用地の確保や通信設備の整備についてもノウハウを持つ。人口減少や新電力の台頭で、本業のエネルギー事業は大きな成長が見込みづらく、ハイパースケールDC事業を新たな収益源として育てたい考えだ。
DC市場は拡大を続けている。クラウドサービスや動画配信サービスに加えて、生成AI(人工知能)の利用も広がっており、調査会社の富士キメラ総研によると、国内の市場規模は2027年には4兆4600億円に達する見通しだ。
新規参入する企業も相次いでいる。NTTは精華町内にハイパースケールDCの建設を計画しており、三菱商事は昨年、大阪府内だけで4棟目となるDCを完成させた。
一方で、施設が完成すれば、その後は保守管理を続けていくだけになり、DCの立地には「産業振興につながりにくく、雇用も生まれない」(自治体幹部)といった消極的な意見も根強い。大量の電力を消費することから、海外では建設や運用に制限を設けるケースもある。【読売新聞】