福井県の杉本達治知事は10月、関西電力の使用済み核燃料対策の工程表を受け入れ、40年超原発3基の運転継続を認めた。年末を期限に燃料を一時保管する中間貯蔵施設の県外候補地を示すとの関電の約束は履行されないままの決着は「原発を止めない」という両者の方針一致が透ける形となった。工程表提示からわずか3日後の容認決断に、地元は「あまりに拙速」と反発。大部分の燃料の搬出先は不確定だ。
「新しいことはない。時間をかけて出てきたのがこれか」。同県美浜町の美浜原発から約15キロに住む若狭町の農業石地優さん(70)は批判した。
高浜原発1、2号機(同県高浜町)と美浜3号機は運転開始から47~49年を迎えた。関電は中間貯蔵候補地の約束を守れなければ、3基を運転しないと2021年2月に公言。今年6月、県内の使用済み燃料の5%をフランスへ搬出する計画により約束を果たしたと主張した。県に詳しい説明を求められ、10月に工程表を出した。
この中で青森県六ケ所村の再処理工場や中間貯蔵施設を搬出先に挙げたが、再処理工場は完成時期を26回延期。中間貯蔵は候補地が決まらず、山口県上関町長が建設に向けた調査を容認したものの周辺自治体からの反対もあり、進んでいない。
今の保管先の燃料プールは最速4年で満杯になるという。関電は構内で保管する乾式貯蔵施設の検討を新たに掲げたが、この施設に移した分生じるプールの空きは使用しないと説明。ただ、国内外の情勢変化などで搬出が滞り、安定的なエネルギー供給ができなくなった場合は例外とした。
「関電の本音は、原発構内の貯蔵容量を増やすことではないか」と石地さんは憤る。11月下旬からの福井県議会では一部の県議が「永遠の一時保管場所にならないと断言できるのか」と質問。原発に反対する市民団体は工程表容認を撤回し、県民説明会を開催するよう県に申し入れた。
一方で、高浜町の石油販売業田中康隆さん(67)は「乾式貯蔵で仮置きすればいい。空気の自然対流で冷却する方式で、安全と聞いた」と理解を示す。また、以前から乾式貯蔵について発言してきた同町の野瀬豊町長は記者会見で「容量がいっぱいになっても原発を軽々と止める判断はしにくい。バッファ(緩衝)的要素も出てくる」と容量超えの可能性に言及した。
乾式貯蔵施設の建設には数年かかる。関電は来年初めにも乾式貯蔵施設の具体的計画を地元に示すとみられる。
杉本知事は記者会見や県議会で容認の理由を「(関電の)一つ一つの取り組みは十分ではないが、全体としては一定の前進があった」と説明してきた。
県関係者は「容認は原発を止めないという方針から。誰もが工程表は無理があると思っている」と知事の心境を推し量る。「搬出が進まなければ運転できなくなる。問題を先送りしただけだ」
【京都新聞】