東京電力柏崎刈羽原発が立地する新潟県柏崎市、刈羽村の住民でつくる「原発の透明性を確保する地域の会(地域の会)」の情報共有会議が10日、柏崎市であった。「避難計画の責任の所在を明瞭にして」「『国が前面に立つ』という姿が見えない」。国に対し、住民からは多くの意見や質問が飛び交った。
情報共有会議は、柏崎刈羽原発の安全性を住民が毎月話し合う「地域の会」の拡大版。年1回開催され、内閣府(原子力防災担当)、原子力規制庁、資源エネルギー庁といった国の機関や県、柏崎市、刈羽村、東電の代表が一堂に会し、委員である住民の質問や要望を聞き、意見交換する。花角英世知事や東電の小早川智明社長らが出席した。
複数の委員からの意見を受け、資源エネルギー庁の担当者は、原発の必要性や再稼働など国民の理解促進に取り組むと繰り返し、「国が前面に立つ」と強調した。政府は昨年8月の「グリーントランスフォーメーション(GX)実行会議」で、次世代型原発の新増設の検討や、柏崎刈羽原発6、7号機を含む7基の再稼働を目指す方針を示した。再稼働には地元理解が不可欠なことから、岸田文雄首相は「国が前面に立ってあらゆる対応をとる」と発言していた。
内閣府の担当者は原子力防災担当の役割について、平時から緊急時まで一貫して、住民避難を含め原発敷地外の原子力災害対策に対応することであると紹介。その上で、避難計画立案にあたって責任の所在を明瞭にするよう求めた委員の要望について、「国として自治体任せにせず、連携して避難計画の具体化・充実化を支援している」などと回答した。
この委員が回答に納得できず再質問。「誰がこの地域の防災を担ってくれるのか? 避難計画を作る段階から国が前面に立ってほしい」と求めると、内閣府の担当者は避難計画を策定する権限は地元自治体にあり、自治体と一体となって対応するなどとした。責任の所在は曖昧なままだとして、別の委員からは「分からない」との声が上がった。さらに別の委員が「責任は(自治体と)応分か?」と尋ねると、内閣府担当者は「軽重を含めそれぞれに責任があるということ以上申し上げられない」と述べるにとどまった。
また避難を円滑にするための道路など、インフラ整備への財政支援の要望が続出し、「(これに)迅速に対応することが『国が前面に立つ』ことだ」と指摘する委員もいた。
「ミスを出さないこと自体が目的化しているのでは?」。東電には原発の周辺防護区域に未許可のスマホを持ち込んでいた問題などを念頭に、質問が相次いだ。終了後、この指摘について花角知事は「(発言の)真意は分からないが、ミスを犯さないこと、それ自体は大切なことだ」、小早川社長は「人為的なミスや機械の故障はゼロにはできない。ささいな部分でも改善していく取り組みができるようになってきたのは非常に良いことで、それをぜひ委員の皆さんに伝えたかった」と話した。【毎日新聞】