空前の利益は還元されるのか──。電力大手10社の2023年4~9月期決算が10月31日、出そろった。このうち、北海道、東北、中部、北陸、関西、中国、四国、九州の8社が最高益を更新。東電HDも純損益が3508億円の黒字となり、業績は大幅に好転した。
家庭向けが多い「規制料金」は、北海道、東北、東京、北陸、中国、四国、沖縄の7社が6月から平均15~39%の値上げに踏み切っている。一般家庭に負担増を押し付けた形だ。ロシアのウクライナ侵攻の影響で燃料価格が高騰し、収益が大幅に悪化したことを理由に挙げていた。経産省が5月に認可した。
しかし、大幅悪化から一転、最高益になったのならば、値下げできるはずだ。東北電力、東京電力、中国電力に聞いた。
各社が強調したのは「期ずれ」だ。電気料金は、原油や天然ガスなどの燃料費が数カ月遅れて反映される。燃料費が下落した場合、電力会社の燃料コストは下がるが、数カ月前の高い燃料費が反映された電気料金で売れ、「期ずれ差益」が生じるのだ。
中国電力は「期ずれの影響が大きく、最高益は一過性だと考えています。前年度第2四半期は685億円の赤字でしたが、今年度第2四半期の電気料金見直しによる黒字は513億円。赤字を埋めるに至っていない」(報道グループ)、東電は「期ずれ差益は1680億円で価格改定の効果は170億円と期ずれの影響が圧倒的に大きい」(広報室)、東北電力は「最高益は期ずれの影響が大きい」(広報担当)とそれぞれ答えた。
期ずれの影響はあるとしても、収益は確実に改善されている。いつになったら、引き上げた料金を戻せるのか──。メドを聞いた。
「21年度と22年度は2年連続、過去最大の赤字を出し、財務基盤はかなり傷んでいる。健全経営のため当面は現行の料金水準を維持したい」(中国電力)
「電気料金は生活に直結する重要なものだと捉えています。料金の改定については、原価と電気料金について著しい乖離が生じていないかなどを見極めながら、慎重に検討していきたい」(東電)
「有利子負債が3兆円を超え、自己資本比率は13%と厳しい財務状況だ。ここを改善しなければ、値下げはできません」(東北電力)
いろいろと「できない理由」をつけて、値下げの実行には後ろ向きだった。ボロ儲けをしても消費者には還元しないつもりだ。値上げはテキパキ動いたくせに、値下げはモタモタのダブルスタンダード。値上げを認可した西村経産相は、どうするつもりなのか。【日刊ゲンダイ】