国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は13日、ウクライナの首都キーウを訪れ、ゼレンスキー大統領と会談した。ロシア軍が占拠するウクライナ中南部のザポリージャ原子力発電所の安全性が、冷却水の供給源であるカホウカ・ダムの決壊で脅かされていることから、具体的な対応を協議した。ウクライナ大統領府が発表した。
ゼレンスキー氏は会談で、ダム決壊について「ロシア軍が意図的に爆破した結果、原発の安全性のリスクが著しく高まった」と強調した。グロッシ氏が状況を把握するため原発を訪れることを歓迎し、「原子力事故を防ぐ唯一の方法は、完全な非武装化、脱占領、ウクライナによる発電所の管理の回復だ」と訴えた。
グロッシ氏は会談後の会見で、原発に冷却水を供給する貯水池の水位について、「着実に下がっているが、差し迫った危険を意味するものではない」と述べる一方、「貯水池の水量は限られている」として迅速な対応が必要だとした。AP通信が伝えた。
ウクライナ軍が領土奪還をめざす反転攻勢を開始したことについては、「活発な戦闘が行われている。原発が再び攻撃されて危険な状況に陥る可能性を非常に憂慮している」と語った。
ザポリージャ原発では、IAEAの職員が常駐するようになった昨年9月以降も、周辺で激しい砲撃が続く。ロシア、ウクライナ双方が互いの攻撃だと主張するなか、外部電源を失い、原子炉を冷却するための電力を非常用電源に頼る危機に何度も陥っている。【朝日新聞】