テロ対策の不備で事実上の運転禁止命令が出ている東京電力柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)について、原子力規制委員会は6日午後、同原発の関連施設内で、稲垣武之所長から改善状況や課題への対応について直接聴取した。規制委が令和3年4月から実施している同原発への追加検査の一環。原子力規制庁の古金谷敏之追加検査チーム長は聴取後、「一定の改善は図られているが、課題が依然残されている」と述べ、それらの課題が解消するまで命令解除は難しいことを示唆した。
聴取は午後4時すぎから約1時間、冒頭以外は非公開で行われた。規制庁からは古金谷氏を含む職員3人が参加した。規制委が追加検査で稲垣所長から聴取を行うのは初めて。
残されている課題について、古金谷氏は「是正措置(禁止命令)の解除に影響するもの。東電もその課題を認識している」と指摘。一例として、原発外部からの侵入検知などを挙げた。
今後については「東電の課題への取り組み次第」とした。
稲垣所長は聴取の冒頭、「現在、核物質防護の強化に資するさらなる改善アクションを取りまとめ、鋭意実行している」と語った。
同原発では3年、核物質防護設備の機能が一部喪失し、テロ目的などの不正な侵入を検知できない可能性があったことが判明。さらに同原発所員が同僚のIDカードを無断で持ち出し、中央制御室に不正入室する問題も発覚した。
規制委は同年4月、事実上の運転禁止命令を出すとともに、追加検査に着手。命令解除に必要な最低限の要件として、核物質防護の強化や、自主的に改善する取り組みが社内に浸透していることなど3つの項目を示した。
規制委は今月3日、東電の小早川智明社長からも同様の聴取を行った。
【産経新聞】