政府は、来年春から夏ごろに福島第一原発の「処理水」を海に放出する方針で、福島県内の漁業関係者は「常磐もの」に対する新たな風評を懸念しています。
「おいしい!」「処理水って何?」首都圏に住む人たちの様々な声を取材しました。
2月、東京・渋谷区にある代々木公園で開催された「発見!ふくしまお魚まつり」。
福島県沖でとれるいわゆる「常磐もの」を首都圏でPRし、震災・原発事故からの復興と風評払拭を目的としたイベントで、全国の魚介グルメが楽しめる魚ジャパンフェスと同時開催されました。
和食処かに船・石井勝さん「とにかく一人でも多くのお客さんに、福島のお魚の良さを伝えたいです」
こう話すのは、福島県いわき市でおよそ50年にわたり、常磐ものを使った料理を提供する「和食処かに船」の石井勝さんです。
販売するのは、ヒラメやノドグロなど常磐ものの魚をふんだんに使った海鮮丼で、店の前には、各地から訪れた人たちで長い行列ができていました。
千葉県から来た男女・女性「新鮮でみずみずしくておいしいです」
男性「雰囲気とかも相まってたのしいです」
「海に放出するんですか?」処理水理解度はさまざま
一方、福島第一原発にたまり続ける処理水の海洋放出について聞くと…
神奈川県から来た人「あー太平洋の方に流すと、ニュースで少し見たくらい」
神奈川県から来た人「俺は知らない」
都内から来た親子・娘「アルプス処理水…知ってる?」
母「原子力発電所の処理水を海に放出するんですか?何のために?」
海洋放出への理解度は様々で、中には処理水自体を知らない人も…
かに船・石井勝さん「処理水の理解はまだまだ薄いというか、他人事に感じているかと思うんですよね。東京の皆様も」
今年1月、政府は「処理水」について、「今年春から夏ごろ」に海に放出する方針を決定しました。
計画では、処理水に含まれる放射性物質トリチウムの濃度を国の基準値の40分の1となる1リットルあたり1500ベクレル未満にまで海水で薄め、放出します。
震災・原発事故からまもなく12年。県内の漁業が試験操業を終え、本格操業へと舵を切る中で迫る処理水の海洋放出について、国民の理解はどこまで進んでいるのか。
経済産業省・太田房江副大臣「全国に対する、あるいは世界に対する情報発信等の取り組みを強化させていただきました」
今年1月、いわき市で開催された処理水対策評議会で、太田房江経済産業副大臣は、政府が去年12月に全国で行った処理水の安全性を発信するCMや広告の効果を報告。
全国の処理水の認知度は、去年9月時点で46.5%だったものが、情報発信後は55.3%と8.8ポイント上昇し、一定の効果が表れたと説明しました。
しかし、石井さんは全国の物産展に参加する中で、認知度はさらに低いと感じています。
かに船・石井さん「私的には3割のお客さんくらいしか処理水については認識はないのかなと思います。1月には九州の方に行って処理水の話をしたんですが、ほぼほぼわからないです。遠くなればなるほど認知は少ないです」
その理由について石井さんは、震災・原発事故の風化が進み、人々の関心が薄れていることをあげ、こうした中、放出が始まれば新たな風評につながりかねないと危機感を抱いていました。
【テレビユー福島】