東京電力柏崎刈羽原発の稲垣武之所長は26日の定例記者会見で、運転開始30年にあたり3号機の審査に使われる「高経年化技術評価書」の一部に2号機のデータを流用していた問題について、意思疎通に問題があったとの認識を示した。「社内はもちろんのこと、原子力規制庁に対しても、より密にコミュニケーションを取りながら進めるべきだった」と語った。
東電によると、評価書の作成作業は2020年に始まり、委託先のグループ企業である東電設計から再委託を受けた東芝エネルギーシステムズが実務を担った。東電の担当者には、一部の設備に関する詳細情報が得られないと連絡があり、2号機のデータを使うことについて相談を受けていたが、担当グループ内の意思疎通が不十分なまま作業が進められたという。
会見で稲垣所長は、「これが大きな課題なのか、規制庁に相談すべきなのか、十分な議論ができないまま評価書ができあがった」と説明。「(2号機のデータを)『参照した』と評価書の中に記載すべきだし、規制庁に説明すべきだと痛切に感じた」と述べた。
東電が22年9月、再稼働に向け自ら達成する目標として公表した「発電所の目指す四つの姿」の一つには、「発電所で働く全ての人々が円滑にコミュニケーションを図っていること」がある。稲垣所長は「まだ到達していないと実感している」と語った。
評価書は、22年8月に規制委に提出されて間もなく一部の解析結果の誤りが判明し、再確認を進める中で、2号機のデータを流用していた131カ所を含む149カ所の誤りが見つかった。再確認の過程では稲垣所長まで報告が上がらず、所長に知らされたのは、社内で報告書がまとめられる前日の11月30日だった。【朝日新聞】