国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所の研究グループは、福島第一原子力発電所の事故後、10年間調査を行い、森林土壌中の放射性セシウム(セシウム137)の分布や動きを解明。ほとんどの放射性セシウムが、時間の経過と共に鉱質土層の表層に移動し、現在ではほぼ動かなくなっており、この成果は今後の被災地の森林管理や放射性セシウムの長期動態予測に役立つ。
同研究グループは、原発事故による汚染の程度や優占樹種の異なる10地点の森林を対象に、事故後10年間継続して落葉層・鉱質土層を調査。放射性セシウムの分布や動きを明らかにした。
その結果、10年間で落葉層における放射性セシウム蓄積量は減少し、深さ5センチ以内の鉱質土層表層に移動していることがわかった。また、現在では、鉱質土層表層の放射性セシウム蓄積量の増加は、ほとんどの調査地において止まり、ほぼ一定値になっていた。樹木による土壌からの放射性セシウムの吸収量と落葉などによる地表への放射性セシウムの移動量が釣り合ってきていることが推定された。
これほど多地点において長期的に行われた信頼性の高い調査は、世界的にも類を見ない貴重なもの。今回の成果は、今後の被災地の森林管理手法の検討や、森林内の放射性セシウムの動態や将来の林産物の濃度の予測に活用されることが期待される。
同成果は8月2日、『Journal of Environmental Radioactivity』誌にオンライン掲載された。
【JAcom】