ドイツ政府は5日、年末で運転を停止する原子力発電所3基のうち2基を閉鎖せず、緊急時の予備電源として来年4月半ばまで維持する方針を表明した。ドイツは2011年の東京電力福島第一原発事故を受け、22年末までの原発全廃を表明していたが、ロシアのウクライナ侵略で深刻化するエネルギー危機に対処するため、「脱原発」の完了を先送りする余地を残した。
対象は南部のバイエルン、バーデン・ビュルテンベルク両州の2基で、年末で送電網から切り離すが、非常時に発電できる状態を維持する。「他の手段で(電力の)供給危機を回避できないと懸念される場合」に限って使用するとした。
ロシアはウクライナ情勢で対立するドイツに対し、事実上の報復措置としてガス供給を大幅に絞り込み、8月末には露独間の主要パイプラインを通じたガス輸送を完全に止めた。今回のドイツの措置は、冬場に暖房へのニーズが高まるガスの発電向け使用を極力減らす策でもある。【読売新聞】