ウクライナの国営原子力企業「エネルゴアトム」は7日、SNSで、ロシア軍が6日夜、南部ザポリージャ原子力発電所を砲撃し、使用済み核燃料の貯蔵施設付近に着弾したと発表した。作業員1人が負傷した。原発への砲撃は、5日に続き2日連続で、欧州最大規模の原発を巡る緊張が高まっている。
6日の砲撃で、放射性物質を監視するセンサー3基が損傷し、「異常の迅速な発見と対応が不可能になった」とした。貯蔵施設には使用済み核燃料が入った174の容器が置かれていた。原発を占拠している露軍兵約500人や露側の原子力企業関係者は、事前にシェルターへ避難したという。
一方、ロシア側が一方的に任命した親露派の「ザポリージャ州知事」はSNSで、ウクライナ軍が多連装ロケット砲で、貯蔵施設エリアを攻撃したと主張した。5日と同様、双方が相手の攻撃だと非難する構図だ。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は7日、「ロシアによる『核テロ』には、露原子力産業への制裁など国際社会の強力な対応が必要だ」と訴えた。
国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長は6日の声明で、5日の砲撃について、「原子力災害のリスクが浮き彫りになった」と強い懸念を表明した。7日には自身のツイッターで、IAEAの専門家の派遣を受け入れるよう関係者に要求した。
声明によると、原子炉の損傷や放射性物質の放出はない。発電所の外部電源システムなどが損傷したが、電線2本は使用でき、運転状況は安定している。グロッシ氏は「原発の安全を危険にさらす軍事行動は容認できない」と強調し、当事者に最大限の自制を求めた。【読売新聞】