国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は6日、5日に砲撃を受けたウクライナ南部ザポロジエ原子力発電所について「ウクライナと周辺の環境を脅かす非常に現実的な原子力災害のリスクがある」との声明を発表した。現段階では原子炉の損傷や放射能の放出はないものの、原発への攻撃は「壊滅的な結果をもたらす」と警告した。
5日の原発への砲撃についてウクライナとロシアは、双方とも相手の攻撃だったと非難している。発電能力で欧州最大級のザポロジエ原発は軍事侵攻後にロシアが支配下に置いている。
ウクライナメディアによると、同国国営の原子力企業エネルゴアトムは6日、ロシアが「発電所のインフラを破壊し、国の南部を停電させようとしている」との見解を示した。砲撃で操業に「深刻なリスクが発生している」としたうえで、発電所への砲撃は続くと予測した。
グロッシ氏は声明でウクライナ側から得た情報として、原子炉自体の損傷や放射性物質の放出はないと明らかにした。だが敷地内の他の場所で被害が出ているという。
声明ではロシアを名指しせずに「原発の近くでは最大限に自制するよう、全ての関係者に緊急に訴える」と強調した。ロシアに対しては「占領下で原発を運営するウクライナ人スタッフが、彼らと施設自体の安全を脅かされずに任務を遂行できなければならない」と訴えた。
欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表は6日、自身のツイッターに「EUは原発周辺でのロシアの軍事活動を非難する。これは原子力の安全規則に関する重大で無責任な違反だ」とロシアを批判した。同原発の安全確保に向けて、IAEAスタッフの現地派遣を受け入れることもロシアに求めた。
【日本経済新聞】