小泉純一郎元首相が顧問を務める「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(原自連)」は最新の提言で、国内の原発再稼働は、ロシアによるウクライナ侵攻で生じたエネルギー価格高騰への解決策にはならないと強調し、原発を存続させる危険性に警鐘を鳴らした。小泉氏と、原自連副会長の中川秀直・元自民党幹事長に脱原発への考えや今後の取り組みを聞いた。
―ロシアによるウクライナ侵攻の長期化で、自民党を中心に原発再稼働を求める声が強まっている。
小泉氏「ロシアは原発への攻撃も行った。(有事には)日本でも原発が攻撃の標的になり得る。国民に向けた核兵器を持っているようなものだ。再稼働は危ない。恵まれた自然エネルギーを活用する方向にかじを切るべきだ」
―再稼働論の背景には何があるか。
小泉氏「原子力技術に一生を懸けてきた人々がいる。電力会社や原発メーカーは関連企業を多く持っており、立地自治体には交付金が出て経済も潤う。だから議員も反対できない」
―コストの低さなどで原発を評価する意見もある。
小泉氏「大うそだ。(本格稼働しないまま廃炉が決まった)高速増殖原型炉『もんじゅ』には政府が1兆1000億円も費やした。東京電力福島第一原発事故で、今も数万人が故郷に帰れていない。危険性の高い高レベル放射性廃棄物の最終処分場も見つかっていない」
―原発に頼らずに電力を安定供給できるか。
小泉氏「福島原発事故後の一定期間、原発の稼働はゼロだった。原発なしでもやっていけると実証したからこそ、私も原発ゼロを訴えている。首相の権力は強い。ひとたび決断すれば実現は可能だ」
―岸田文雄首相は「安全性を確認した原発は再稼働する」との立場だ。
小泉氏「安全性を確認しても安全でなかったからこそ、福島の事故が起きたということを分かっていない。脱原発に向けた努力もしておらず、期待できない」
―岸田首相に脱原発を働き掛けないのか。
小泉氏「政界を引退したから口は出さない。原発ゼロ運動は続ける」
―野党への注文は。
小泉氏「政権を取りたいなら、選挙の目玉公約として原発ゼロと自然エネルギーの発展を打ち出すべきだ。原発関連の労働組合の支援を受けているため原発に反対しにくいのだろうが、(脱原発を支持する)圧倒的な無党派層に比べれば、組合票はわずかなものだ」
―今後の活動方針は。
中川氏「かつて科学技術庁長官を務めた私が脱原発を語るのは不明を恥じるしかないが、放射性廃棄物を閉じ込める方法が全然見つからない。人類の生存に関する問題だ。原発再稼働による目先の快適さを選ぶのか、子どもや孫たちの将来の安全か。政治を動かすような世論を喚起したい」
【東京新聞】