東京電力福島第一原発事故で被害を受けた住民らが東電と国に損害賠償などを求めた福島訴訟(生業訴訟)で、最高裁第二小法廷(菅野博之裁判長)は25日、原告と国の意見を聞く弁論を開いた。弁論は千葉、群馬の両訴訟に次いで3回目。来月に弁論が予定される愛媛訴訟と合わせて、今夏にも国の責任に関する統一判断が示される見通し。
同種の集団訴訟は全国で約30ある。このうち福島など4訴訟について、最高裁は3月、東電の責任を認め、国の基準を超える計約15億円の賠償が確定した。
国の責任については、高裁での判断が割れている。争点は、2002年に国が公表した津波地震の予測「長期評価」などを踏まえ、国は巨大津波を予見できたか(予見可能性)▽東電に対策を取らせることで事故を防げたか(結果回避義務)――の2点だ。
25日の弁論で原告側は、長期評価について「客観的かつ合理的根拠を有する科学的知見で、信頼性がある」と主張。国は長期評価の公表後、東電に対し、津波対策が適切に行われているかを確認すべきなのに怠ったと指摘した。
国側は「長期評価は専門家の間で原子力規制にとり入れるべき精度と確度を備えた見解として認められていなかった」と反論。仮に長期評価を踏まえた防潮堤などの対策を東電に講じさせたとしても、結果として事故を防ぐことは不可能だったとした。
弁論後、東京都内で会見に臨んだ原告団長の中島孝さん(66)は「国は11年経っても反省していない。裁判所には国の責任を認める判決を」と訴えた。
弁論を前に、この日は原告ら約350人が国会前や最高裁前で集会を開いた。参加した郡山市の小田部志津子さん(73)は震災前、長女家族と一緒に住むために自宅を建てたが、原発事故で長女たちは避難したままだ。「原発事故がなければ幸せに暮らすことができたのに、その夢を奪われた。最高裁には私たちに寄り添った判決を書いてほしい」と求めた。【朝日新聞】