福島県と宮城県で震度6強を観測した地震では、東京電力福島第一原発などで使用済み核燃料プールの冷却が相次いで停止した。第一原発では、野積みになっているコンテナが転倒し、処理水などを保管する80基以上のタンクの位置がずれた。第一原発では長期にわたる廃炉作業が進むが、地震や津波など自然災害によるリスクへの対策が依然重要であることを示した形だ。
◆余裕
地震後、福島第一原発5号機や福島第二原発1、3号機、東北電力女川原発1号機では、燃料プールの冷却が自動停止した。第一原発2号機ではプールにつながるタンクの水位が低下し、手動で冷却を止めた。再開まで約7時間半かかった。
関係者によると、原発では燃料プールやタンクで水位変動が検知されると、自動的に冷却を止める仕組みになっている。配管などが破損した場合、冷却用に水を循環し続けると状況が悪化し、プールの水位が保てなくなる恐れがあるためだという。
東電の担当者は「水温が運転管理上の制限値である65度まで余裕があることを踏まえ、いったん冷却を止めて原因を確認する判断をした。設備の故障を防ぎ、結果的に冷却停止期間を短くできる」と説明した。
◆1007体
ただ、福島第一原発には、原子炉建屋の上部に大量の使用済み燃料が依然残る。特に炉心が溶けた1、2号機のプールには現在も計1007体の核燃料が残されたままになっている。建屋は耐震性があるとされるが、強い揺れや大きな津波といったリスクの懸念は消えない。
東電はプールからの取り出しを計画するが、1号機の取り出し開始は2027~28年度、2号機は24~26年度。当初の計画から延期を繰り返しており、まだ長い時間がかかる。順調に進むかどうかは見通せない。
◆情報遅れ
第一原発では、地震の揺れで処理途中の汚染水や処理水を保管する80基以上のタンクがずれ、廃炉作業で使った保護衣や鉄くずが詰まったコンテナ6基が転倒した。
強い地震があった後、第一原発の状況を知りたいという要望に東電は応えているのか。21年2月13日に福島・宮城両県で最大震度6強を観測した地震では、タンクのずれや原子炉格納容器の水位低下に関する公表が遅れ、東電の情報提供の姿勢に批判が噴出した。今回は、東電が発信するツイッターによる情報に遅れが出たとして、経済産業省は迅速な情報発信をするよう指導する事態になった。
東電福島第一廃炉推進カンパニー広報担当の松尾桂介氏は17日の記者会見で「100点満点とはいかないかもしれないが迅速で正確な情報発信に努めていきたい」と述べた。【福島民報】