ウクライナを侵攻したロシア軍は4日、南部にある欧州最大級のザポロジエ原発を攻撃し、占拠した。砲撃で一時火災が発生。ウクライナの原子力当局は原子炉の安全性には問題はなく周囲の放射線量の変化もないとしているが、稼働中の原発に対する史上初の軍事攻撃は大惨事を招く恐れがあった。ゼレンスキー大統領は「テロ国家は今や核テロに走った」とロシアを強く非難した。一方、両国は3日夜、停戦交渉を行い、一部の戦闘地域から民間人を退避させるための「人道回廊」の設置で合意した。
◆「原発爆発すれば欧州滅びる」
ウクライナのクレバ外相は火災発生直後、ザポロジエ原発が爆発すれば、1986年のチェルノブイリ原発事故の10倍の被害になるとして、ロシア側に攻撃の即時停止を要求した。
国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は、原子炉が損傷していれば「重大な危険を招く」と警告。ゼレンスキー氏は動画メッセージで「ウクライナにある15基の原発が爆発すれば欧州は滅び、各国の国民は避難を強いられる」として、国際社会にロシア軍の侵攻を止めるよう訴えた。一方ロシア国防省はウクライナの工作員が原発施設に放火したと主張した。
ロシアは、原発の使用済み核燃料や高レベルの放射性物質をウクライナが核兵器に転用する恐れがあると主張。2月24日に廃止済みの北部チェルノブイリ原発を占拠している。
◆回廊周辺で一時停戦できるか
両国が3日に行った2回目の停戦交渉は即時停戦では合意できず、来週に予定される次回協議に持ち越された。ゼレンスキー氏はオンライン記者会見で「妥協できない点がある」と語った。
交渉では人道的措置として一般市民を戦闘地域から安全に脱出させる人道回廊の設置と、戦闘が激化している地域への医薬品や食料品の搬送でも合意。
ロシア軍の包囲で住民の物資不足が深刻化している南部マリウポリなどが対象となるとみられ、回廊周辺で一時停戦が実現できるかが焦点だ。
ただプーチン大統領は3日、フランスのマクロン大統領との電話協議で、「いかなる状況でもウクライナでの軍事作戦を完遂する」と述べ、侵攻を遂行する考えを示した。【東京新聞】