自民党は8日の政調審議会で、東京電力福島第一原発事故を巡って科学的知見に基づかない誤った情報を流布したとして、小泉純一郎氏ら5人の元首相への非難を盛り込んだ決議を了承した。近く岸田首相に申し入れる予定だ。
決議は、小泉氏に加えて、菅直人、細川護煕、鳩山由紀夫、村山富市の計5氏が、事故で「多くの子供たちが甲状腺がんに苦しみ」と記載した書簡を欧州連合(EU)側に送ったことを批判し、いわれのない差別や偏見を助長すると非難した。日本政府には、風評が生じないよう情報発信の強化などを求めている。
福島県の専門家部会や国連科学委員会は、事故当時18歳以下だった住民の甲状腺がんの診断について「放射線の影響とは考えられない」としている。
小泉氏を出身政党の自民が非難するのは異例だ。世耕弘成参院幹事長は8日の記者会見で「事故と関係ないことは明確に示されているのに、首相経験者が 歪曲わいきょく して海外に発信するのは極めて残念だ」と述べた。
一方、菅氏が所属する立憲民主党は「元首相ご自身の判断で行われているものだ。党としての活動ではない」(泉代表)との考えで、西村幹事長も8日の記者会見で「党として何か対応する考えはない」と述べた。【読売新聞】