東京電力は24日、柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)で、配管の溶接工事の不備を訴える匿名の申告があった問題で、すでに再稼働前の安全対策工事を終えたとしていた7号機でも、74カ所で不備が見つかったと発表した。東電は1千カ所以上の溶接をやり直すとしており、来年夏ごろまでかかるという。来年秋に計画する7号機の再稼働は、ますます困難になった。
東電によると、今年3月以降、特定の下請け会社の名を挙げて、6、7号機の消火設備の配管で「ずさんな溶接を行っている」との匿名の申告が複数あった。この会社が溶接した7号機の消火配管1220カ所のうち、194カ所を調べたところ、約4割にあたる74カ所で不備が見つかった。溶接時に酸化防止のために配管内に入れることになっていたガスを注入しておらず、長期間使うと劣化が進み、安全性に問題が出る可能性があるという。
東電などが溶接士17人に聞き取りをしたところ、9人が「ガスを流さずに実施した」と認めた。記録では、ガスを注入したと虚偽の報告をしていた。「ホースを配管に差し込んだが、ガスを流さず、流したふりをしていた」と話す溶接士もいた。作業を早く終わらせることや、ガスボンベの搬入に手間がかかるなどの理由で、2019年9月ごろから、ガスを流していなかったという。
東電は、この下請け会社が施工した1220カ所の工事を全てやり直すことを決めた。さらに、別の3社が溶接した計317カ所でも配管内の酸素濃度を管理していないなどの不備が見つかり、再工事を行う。
6号機にも、この下請け会社が溶接した配管が1200カ所ある。これまでに400カ所を調べ、30カ所で不備が見つかっている。
東電の橘田昌哉・新潟本社代表は、一連の施工不良について謝罪し、「原子力発電所の安全を脅かすものだと感じている」と語った。再発防止策として、「作業に携わる一人ひとりに、安全への重要性を伝えることに努めていかなければならない」と述べた。再稼働については「私たちは再稼働は必要だと思っている。しかし、この1年間、さまざまな事象が輻輳(ふくそう)した状況になっており、地域の安心を得るためにも、一つ一つ解決していくのが大事だ」と語った。
●東京電力柏崎刈羽原発の安全対策工事などをめぐる主な経緯
2020年
9月 原子力規制委員会が6、7号機の再稼働に向けた審査で、東電の「適格性」を認める
10月 規制委が7号機の保安規定を認可
2021年
1月13日 7号機の安全対策工事の完了を発表
1月23日 社員が20年9月、同僚のIDで中央制御室に入ったことが判明
1月27日 安全対策工事が一部未完了だったと発表。その後も未完了の公表が相次ぐ
3月16日 外部からの侵入を検知する設備が故障し、代わりの措置も不十分だったことが発覚
4月14日 テロ対策の不備が相次いで発覚したことを受けて、規制委が同原発の再稼働を事実上禁止する命令
6月10日 工事の未完了は89カ所に上ると発表
7月5日 「6、7号機の消火配管で、ずさんな溶接を行っている」との匿名の申告があり、東電が調査していることが判明
7月21日 7号機の再稼働時期を22年10月とする計画を公表
7月30日 申告を受けた調査で、6号機の配管30カ所にさびなどの工事不備を確認したと発表
9月22日 テロ対策不備問題で再発防止策など盛り込んだ報告書を発表。火災感知器100台の設置不備も公表
10月26日 規制委がテロ対策不備問題で本格的な検査を開始
11月4日 6号機の原子炉建屋に隣接する大物搬入建屋で、コンクリート杭1本に損傷が見つかったと発表
【朝日新聞】