関西電力の金品受領や役員報酬補塡(ほてん)などの問題で、大阪地検特捜部は、会社法違反などの疑いで告発された旧経営陣9人全員を嫌疑不十分で不起訴にした。
金品を贈与したとされる福井県高浜町の元助役が死亡していることなどが捜査の壁となり、刑事責任を問うのは難しいと判断した。
金品受領問題では、原発の稼働という国策の推進を巡り、30年以上にわたって事業者と地元有力者が多額の現金などを介して癒着していた構図が明るみに出た。
告発した市民団体側は、検察審査会に不服を申し立てる方針を示している。関電と株主の両者が進める損害賠償訴訟と併せて、不透明な「原発マネー」の流れを解明し、旧経営陣の責任を問うことが欠かせない。
捜査では、旧経営陣が受け取った金品の見返りに元助役の関連業者を優遇したかどうかが焦点だった。元助役は昇進祝いなどを名目に渡しており、特捜部は金品と対価性のある発注は見つけられなかったという。
関電の第三者委員会は、元助役の要求に応じて工事を発注した事例があったと認定していた。それだけに、捜査で便宜供与の実態が解明されなかったのは残念だ。
特捜部は、東日本大震災による赤字でカットした役員報酬を退任後に補塡した問題についても入念に検討したが、旧経営陣の「嘱託業務の対価で正当な支払いだった」とする主張を覆すのは困難とみたようだ。
補塡に関しては、大阪国税局が、退職金を嘱託報酬に偽装した「所得隠し」とみなし、関電側も認めて追徴額を納付しているという。特捜部の立件見送りには疑問も残る。
対外的には身を削る努力をしていると説明しながら、森詳介元会長が対象者にかん口令を敷いていたのも悪質だ。料金値上げの裏でひそかに行われた補塡は、利用者への背信行為に他ならない。
これらの問題の発覚を受け、関電は、社外取締役の権限が強い会社形態に変更するなど組織改革を進めている。
ただ、顧客獲得を制限するカルテルを結んだ疑いで公正取引委員会の立ち入り検査を受けたり、子会社が送電線周辺の樹木を伐採する際に虚偽の報告をして基準を超える補償費を払ったりするなど、不祥事の発覚が後を絶たない。
関電は、利用者の厳しい目が向けられていることを肝に銘じ、信頼回復に努めるべきだ。 【京都新聞】