東京電力による福島第一原発事故の賠償を巡り、福島県農民運動連合会(農民連)は22日、ブドウや梨の生産農家への賠償金が不適切な算定方法で適正額よりも低く支払われていたケースが複数あったと発表した。東電は農民連の指摘を受けて算定を見直し、農家約10人に計約500万円を追加賠償するとしている。
東電は2019年から、風評被害による農産物の売上高の減少額を算定する際、事故前後の統計データを基にした全国平均価格変動係数を使っている。
福島県農民連によると、この係数が適正値よりも小さい数値に修正され、本来の賠償よりも低く算定されていた。ブドウ農家では1カ月分の賠償で約100万円低くなっていた例もあった。今年5月の東電の説明会で資料に記載されていた数値に疑問を感じ、説明を求めていた。農民連では農家が個別に賠償請求しているが、団体請求をする農業協同組合(JA)などには適正値が使われていたという。
福島市内で22日に記者会見した県農民連の佐々木健洋事務局長(45)は「東電が決めた同じ賠償方式を使っているにもかかわらず、団体請求と個別請求で違う係数が使われており、不公平であり不正な賠償だ」と憤った。県北農民連の服部崇事務局長(50)は「疑問を感じて指摘したから見直されることになったが、他の個人請求の人もきちんと賠償されてないのではないか」と懸念を示した。
東電の広報担当者は取材に、一部賠償に適切な市場動向が反映されていなかったと認めた。個別請求と団体請求で係数が異なっている点は「どのように価格変動係数をかけるかの取り決めが、当社と農民連、当社とJAとの間で違った」と説明した。【東京新聞】