佐賀県玄海町議選(定数10)が21日告示され、現職7人と新人2人のほかに立候補の届け出がなく、9人の無投票当選が決まった。無投票は8年ぶり2回目で、定数割れは初めて。地方議員のなり手不足が深刻化する一方で、九州電力玄海原発の立地自治体でありながら町の将来像を巡る論戦もなく住民代表が決まる現実に表情を曇らせる有権者は少なくない。
数日前まで、10人が立候補を検討していた。ぎりぎりまで悩んでいたある現職(76)はしかし、町役場の受付に姿を見せず、出馬を断念した。「やはり年齢的に引き際。後継を立てられなかったのが心残り…」と漏らした。
町議会は定数12だった前々回に初の無投票となったことを踏まえ、前回の町議選前に定数を2減した。これで4年ぶりの選挙戦となったが、今回再び無投票に逆戻り。立候補者数は定数にも届かず、議会の存立基盤が崩れつつある現実を見せつけられた。
玄海原発がある町の議会は九電の計画を審議するなど重要な役割を担っている。その議会から4年前、反原発派議員が姿を消した。今回、候補者擁立を模索した共産党は、意中の人と折り合えず、無投票にもかかわらず擁立を断念せざるを得なかったという。
有権者は深刻だ。町内の女性(61)は「議員が減り続け、チェック態勢が弱くならなければいいが」。民宿を営む溝上孝利さん(62)は「人口減と政治への関心の低さが原因だろう。これからは住民一人一人が原発としっかり向き合っていく必要がある」と話す。
無投票で7選を果たした議長の上田利治氏は取材に対し「原発がある中で議員のなり手不足解消は喫緊の課題。議会として役目を果たしながら抜本的な対策を考えたい」と語った。【西日本新聞】