日本原子力発電が敦賀原発2号機(福井県)の再稼働に向けた審査資料を無断で書き換えた問題で、原子力規制委員会は18日、信頼性が失われたとして審査の中断を決めた。審査は敷地内にある断層の評価が割れ、すでに5年半も続いているが、さらに長期化が避けられなくなった。
審査では、2号機の原子炉建屋直下にある断層が焦点になっている。規制委の有識者会合は、地震を引き起こす活断層と評価するのに対し、原電は2015年11月に始まった審査の中で、活断層ではないという立証を試みてきた。
資料の書き換えが問題になったのは、ボーリング調査による敷地内の地層の観察記録。原電の主張の根拠になる資料で、昨年2月に規制委が指摘して発覚した。計80カ所で元々のデータを別の調査結果に上書きし、断層が動いた可能性を否定するなどしていた。原電は、書き換えは現場の担当者らの判断で、「書き換えてはいけないという認識がなかった」としている。
規制委は原電が適切に資料を作成し、審査に対応できると認めるまで再開しない方針。規制委の担当者は「原電次第だが、年単位にはならない」とみている。
原電は1966年に日本初の商業炉を稼働させた原発専業の会社。東日本大震災以降、原発を再稼働できておらず、発電した電気を大手電力会社に卸売りする本業ができていない。
保有する原発4基のうち2基は廃炉に。再稼働に向けた審査を通った東海第二原発(茨城県)は今年3月、周辺住民が起こした訴訟で、避難計画に不備があるとして水戸地裁から運転差し止めを命じられた。
原電は大手電力5社から原発の維持管理費など「基本料金」として年約1千億円を得て経営をつないできた。だが、大手も電力自由化などで余裕がなくなってきており、支払額を抑えようとしている。原発を動かせない状態でいつまで経営を維持できるかは不透明だ。
日本原子力発電敦賀2号機の資料書き換え問題の経緯
2015年11月 原電が再稼働に向けた審査を規制委に申請
17年2月 原電の担当グループと調査会社で、ボーリング調査による地層の観察記録を別の調査結果に上書きする方針を決定
20年2月 規制委が観察記録の書き換えを審査会合で指摘。原本の提出や経緯の報告などを求める
12月 規制委が原電本店に立ち入り検査
21年7月 原電が「書き換えてはいけないという認識がなかった」などとする社内調査の結果を報告
8月 規制委が審査中断を決定
【朝日新聞】