3回目の改定となった東京電力の経営再建計画で、東電は変わらず柏崎刈羽原発の再稼働を再建の柱と位置付けた。しかし、再稼働した場合の原子炉1基当たりの収支改善効果は4年前の前回計画(3次計画)と比べて半減。2030年度までに再稼働を想定する基数も減らした。東電にとって、時間の経過とともに原発再稼働のメリットが目減りしていることが数字の上で浮き彫りとなった。
東電は21日に発表した新計画の中で、原子炉1基の再稼働が収支改善に与える影響額を「年間500億円」と試算した。再稼働で浮く火力発電所の燃料費に換算し、「年間900億~1000億円」としていた前回計画から半減した格好だ=表参照=。燃料費の低下や、安全対策工事による減価償却費の増加などが要因という。
時間の経過とともに、メリットがしぼむ。これは東電自身がまいた種でもある。柏崎刈羽7号機は昨年、原子力規制委員会の全審査に合格した。今年6月に再稼働させる青写真も描いていたが、1月以降に相次いで発覚した核物質防護の不備問題を受け、再稼働準備は凍結に追い込まれた。
新計画で7号機の再稼働時期は「2022年10月」以降と設定されたが、東電の文挾(ふばさみ)誠一副社長は「再稼働は信頼の回復が大前提。収支計画を立てる上での仮置きだ」と繰り返し強調した。
東電が計画上、10年間で再稼働を見込む柏崎刈羽の基数も、前回計画の「4~7基」から「3基」に減った。対象も、7、6号機以外は「どの号機を優先させるかは今後検討」(文挾氏)とトーンダウンした。
新計画で目立つのは、むしろ再生可能エネルギーへの投資を明確化したことだ。政府の掲げる脱炭素化の方針を取り込み、30年度までに洋上風力発電を中心に「600万~700万キロワット程度」の新規再エネ電源を開発すると、具体的な目標を計画上初めて明記した。柏崎刈羽の発電出力に置き換えると、5、6基分に相当する。
再生エネへの積極投資で計画が実現すれば、東電の収支に対する原発の相対的なメリットはさらに縮小することになる。小早川智明社長は21日の記者会見でも原発の重要性に触れたが、「電力の中長期的なポートフォリオ(資産構成)を考える上で、原子力エネルギーも『一定量』必要と考えている」と、位置付けの微妙な変化もうかがわせた。
【新潟日報】