福島県飯舘村に残る帰還困難区域の長泥地区で、環境省が除染で出た汚染土を処理して農地などの盛り土に再利用する実証事業を進めている。福島第一原発周辺の中間貯蔵施設で保管する汚染土は、貯蔵から30年以内に県外で最終処分する必要があり、再利用で処分量を減らす狙いだ。
現場を訪れると、白いテントの施設で、フレコンバッグ(土のう)から次々と汚染土がベルトコンベヤーに投入されていた。石や木の根を除去後、必要に応じ土壌改良材を混ぜるという。環境省がいう「再生資材」に変える処理の過程だ。
◆再利用した土で16万立方メートルを農地に
村内の相対的に汚染度の低い他地区から約15万袋の汚染土が搬入され、既に2万袋が再生資材にされて、未除染の農地に盛られた。その上に汚染度の低い山砂を厚さ50センチほどかぶせて、農地ができあがる。
一角では、野菜や花の試験栽培が進む。覆った土の上での栽培のため、作物に含まれる放射性セシウムは非常に低く、最大でも1キロ当たり2ベクレル強となっている(食品基準は100ベクレル)。
最終的には汚染土計33万袋を処理し、16万平方メートルの農地にする計画。県道62号線から100メートル以上離れた比曽川との間の土地は、川側にL字形のコンクリート擁壁を置いて補強した上で、内側に処理した汚染土と山砂を盛って造成する。
◆「汚染拡散」に懸念も 環境省はPRに躍起
造成した土地は水害に耐えられるのか-。環境省福島地方環境事務所の百瀬嘉則・土壌再生利用推進課長は取材に対して、「どの規模の災害まで大丈夫かと言い切るのは難しいが、(各地で被害が出た19年の)台風19号では特に影響はなかった。この時の長泥のレベルでは、再生資材が影響を受けることは考えにくい」と話した。
環境省は8月以降、汚染土の再利用をPRするため、県外在住者向けの現地見学会を開く。高濃度汚染された長泥地区では、覆土で放射線量の低減にはつながるだろう。しかし、汚染されていない地域で汚染土の再利用につながるのかは疑わしい。(片山夏子、山川剛史)
◆8月から一般向けの見学会 月2回のペースで
環境省は8月から、飯舘村長泥地区で進めている汚染土の再利用事業の施設で、一般向けの見学会を実施する。日程は、8月3日(火)、8月21日(土)、9月7日(火)、9月18日(土)まで決定済み。以降、毎月2回、定期的に開催するという。定員は各回最大20人で、参加費は無料。
詳しい内容や申し込みは、環境省の「福島、その先の環境へ。」のサイトの「現地見学会情報」から。【東京新聞】