原子力規制委員会は23日、中国電力島根原子力発電所(松江市)2号機の安全審査で、事実上の合格証となる「審査書案」をまとめた。新規制基準に基づく合格は中国電の原発で初めて。一般からの意見公募を経て今夏から秋にも正式に合格となる見通しだ。
全国では17基目、事故を起こした東京電力福島第1原発と同型では5基目となる。再稼働には安全対策工事の完了と地元自治体の同意が必要で、早くても2022年度以降となる見通しだ。
規制委は島根原発2号機の安全対策の基本方針が新規制基準に適合していると判断した。11年の福島第1原発事故の反省を踏まえてできた新規制基準の審査に合格した原発のみ再稼働が認められている。中国電は2号機の安全対策工事を21年度中に終える見通しだ。
原子力規制庁は同日の会合で、中国電が同庁から借り受けたテロ対策関係の文書を誤って破棄したと報告した。規制委は島根原発2号機の正式合格に向けた手続きと同時並行で、中国電に文書破棄に関する事実関係や管理状況の報告を求める方針を確認した。
島根原発2号機は事故後の12年に定期検査で停止し、13年12月に安全審査を申請した。審査に7年以上かかった。正式に合格すれば、20年2月の東北電力女川原発2号機以来となる。
島根原発2号機は福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)。BWRは新規制基準の審査に合格しても実際に再稼働した例はまだない。中国電は周辺自治体との調整を本格化する考えだが、交渉に時間がかかる可能性もある。
島根原発は県庁所在地にある唯一の原発で、30キロ圏内の人口は約46万人と全国の原発で3番目に多い。新基準に適合させるために大規模な安全対策工事が必要になり、中国電は1号機と3号機を含めて約6000億円を投じた。
2号機の出力は約27万世帯に供給できる82万キロワット。再稼働で火力発電の稼働を抑えられるため、同社は燃料費を年間400億円程度節約できると試算する。二酸化炭素(CO2)排出量では年間260万トン減らす効果を見込んでおり、同社の19年度排出量の約9%を削減できる計算になる。
【日本経済新聞】