東京電力福島第一原子力発電所の事故で、福島県から新潟県に避難した人などが、精神的な苦痛を受けたと訴えた裁判で、新潟地方裁判所は、東京電力に対し原告の大半に合わせて1億8000万円余りを支払うよう命じました。一方、国の責任は認めず、原告側は控訴する方針を明らかにしました。
原発事故で福島県から新潟県に避難したおよそ800人は、住み慣れた地域や仕事を失い、精神的な苦痛を受けたとして、国と東京電力に合わせて88億円余りの賠償を求めました。
裁判では、国と東京電力が巨大な津波を事前に予測できたかや、避難指示が出なかった区域から避難した人への慰謝料の金額が妥当かどうかなどが争点となりました。
2日の判決で新潟地方裁判所の篠原礼裁判長は「原告は避難指示があった地域や自主的避難の対象区域として示された地域から避難した人が大半を占め、避難の合理性と相当性が認められる。放射性物質による人体への悪影響への不安や、避難により職業や学校生活に大きな変化を余儀なくされるなど、多様な精神的苦痛を受けた」と指摘しました。
そして、東京電力に対し、避難指示が出なかった区域から避難した人を含め、原告のおよそ8割にあたる630人余りに、合わせて1億8000万円余りを支払うよう命じました。
一方、国の責任については「10メートルを超える津波の予見可能性は認められるものの、その程度は高くなく、結果を回避する可能性があったとも認められない。事故前の津波対策について国の規制が著しく合理性を欠くとは言えない」などとして認めませんでした。
判決のあと、原告の弁護団が会見し、判決を不服として控訴する方針を明らかにしました。
原発事故の避難者が、国と東京電力を相手取った集団訴訟は全国各地で起こされていて、1審の判決はこれで16件目ですが、これまでに国の責任を認めたのは8件で、裁判所の判断が分かれています。
原子力規制委「事故を踏まえ適切な規制行っていく」
判決について原子力規制委員会は「本日の判決で、原告らの国に対する損害賠償請求がいずれも棄却されたものと承知している。規制委員会としては、福島第一原発の事故を踏まえた審査を厳格に進めていくことにより、適切な規制を行っていく」とコメントしています。【NHK】