東京電力柏崎刈羽原発で相次いで核物質防護体制の不備が発覚した問題で、原子力規制委員会は24日、定例会合を開き、東電に対して原子炉への燃料の装てんなど、核燃料の移動を禁じる「是正措置命令」を出す方針を決めた。原子炉等規制法に基づく行政処分で、東電側の弁明を聞いた上で正式に決定する。東電が再稼働を目指す同原発7号機は、この命令が解除されるまで再稼働できない状態になる。
規制委が原子炉等規制法に基づく行政処分を出すのは、2013年に発覚した高速増殖炉もんじゅ(福井県)の機器点検漏れで保安規定の変更を命令して以来、2例目。商業用原発では初めてとなる。
規制委は今回、検査などで根本的な原因などを特定する前に行政処分を決める異例の対応を取った。更田豊志委員長は同日の記者会見で理由について「東電の核物質防護がしっかりしたものかを確認できず、東電に核物質を動かす資格がない」と説明=表参照=。柏崎刈羽原発の安全を確保するための当面の措置であることを強調した。
規制委によると、命令が解除されるには、東電が「自律的な改善が見込める状態」に戻る必要があるという。更田氏は解除について「多くの議論を経ないと定まっていかない」と述べ、現時点で見通しを示すのは不可能との見方を示した。
この日の定例会合では原子炉設置許可取り消しや運転停止命令など、極めて重い処分も検討された。これらを選ばなかった理由について、更田氏は「今のタイミングで出す理由と必要性があるとは判断しなかった」と説明した。ただ、今後行う追加検査の結果次第では、処分の追加や変更を行う可能性があることも指摘した。
柏崎刈羽原発では、所員が別のIDカードを使って中央制御室に不正入室した問題と、テロ防止に関わる侵入検知設備が長期間、機能喪失していた可能性がある問題が相次いで明らかになっている。侵入検知設備の問題について、規制委は安全上の重要度で4段階で最悪レベルと評価した。
一連の問題を受け、規制委は9月23日までに第三者による原因分析結果などを東電に報告させる方針だ。その上で、2千時間分の追加検査に本格的に入る見通し。更田氏は「常識的に考えて、1年以内に全てのプロセスが終わるとは考えられない」との考えを改めて示した。
【新潟日報】