日本原子力発電東海第2原発の運転差し止め訴訟で、差し止めを命じた水戸地裁判決は、実効性のある避難計画の策定という新たな課題を突きつけた。他の原発の再稼働や原子力政策に影響を与える可能性もある。一方、四国電力伊方原発では広島高裁が一転、運転を認める決定を出し、揺れる司法判断を示す格好となった。
水戸地裁「人口密集、避難容易でない」
「防災体制は極めて不十分で安全性に欠ける」。水戸地裁判決は30キロ圏内に94万人が住む東海第2原発で事故が起きた場合の住民避難の実効性に懸念を示した。
国際原子力機関(IAEA)は原子力施設の安全を確保するため安全対策を5段階にレベル分けした「深層防護」の考え方を採用し、日本でも原子力事業者に求めている。このうち地震や津波などへの安全対策や事故の拡大防止などを求める第1~4層は原子力規制委員会の審査対象で、東海第2は2018年に審査をクリアした。地裁は規制委の審査について「具体的審査基準に不合理な点があるとは認められない」と妥当性を認めた。
一方、住民の被ばくを防ぐための第5層に含まれる避難計画は規制委の審査対象ではなく、作成主体は自治体。水戸地裁は避難計画も規制委の審査と同様に大地震や大津波、火山の噴火などを想定して「実現可能な避難計画が策定され、実行できる体制が整備されていなければならない」と指摘した。【毎日新聞】