手がかりが少ない日本海側での津波のリスクを知る貴重な成果だと期待されます。
国の研究プロジェクトが沿岸各地にある地層を調べた結果、北海道の南西部では過去およそ9000年間に20回も津波が押し寄せていた可能性を示す痕跡が見つかっていたほか、西日本の日本海側でも複数の痕跡が見つかったことがわかりました。
日本海側では1983年の日本海中部地震や、1993年の北海道南西沖地震など、繰り返し地震や津波の大きな被害が出ていますが、記録が少ないことなどから、起こりうる地震や津波の実像はよくわかっていません。
東日本大震災の発生を受けて新潟大学などが日本海各地の沿岸の地層から海の砂や貝など津波が運んだものとみられる堆積物を8年かけて詳しく調べました。
その結果、北海道の奥尻島でおよそ9000年に20回、青森県の五所川原市でおよそ8000年に9回、新潟県の佐渡島でおよそ9500年に24回、津波が押し寄せていた可能性を示す痕跡が見つかっていたことがわかりました。
また、北日本や北陸よりさらに手がかりの少ない西日本でも、鳥取県北栄町
でおよそ6000年に4回、山口県下関市でおよそ7000年に2回、津波が押し寄せたとみられる痕跡が確認されたということです。
研究グループは、日本海の海底地形や断層の特性などからみて、同じ断層が繰り返しずれ動いたのではなく、東北の津波が山陰地方に到達するなど、別々の断層が引き起こした津波が各地に押し寄せていた可能性があるとしています。
「日本海地震・津波調査プロジェクト」で津波堆積物の調査を行った新潟大学の卜部厚志教授は「日本海側の各地で、どれぐらい津波が来るのか初めて全体像が明らかになり、地域ごとにリスクを評価する指標が得られたと考えている」と話していました。
プロジェクトは、調査結果を近く文部科学省に提出する予定です。
断層多い日本海 影響は広範囲に
今回の調査では、鳥取県で見つかった堆積物と、東北で見つかった堆積物の年代が非常に近いことがわかり、同じ地震によってもたらされた津波である可能性も指摘されています。
プロジェクトのメンバーの1人で津波のメカニズムに詳しい東京大学地震研究所の佐竹健治教授は、津軽海峡の西で大地震が起きたと想定し、津波の広がり方をシミュレーションしました。
津波は北海道や青森県、秋田県などの沿岸に、地震発生からすぐに押し寄せます。
その後、ところどころ水深が浅くなる複雑な海底地形などが影響して津波は回り込むような動きをし、影響は広い範囲に及びます。
能登半島や中国地方の沿岸にも押し寄せるほか、韓国やロシアなど近隣の国の沿岸にも到達します。
大陸にぶつかった波が跳ね返り、再び日本に押し寄せるなどして、数日間にわたって影響が続くこともあるということです。
佐竹教授は「日本海側では遠くの海域で起きた津波でも広い範囲で影響が出やすい特徴がある。震源から離れた地域でも油断はできない」と話しています。
各地の調査結果詳細
今回の調査で明らかになった津波が押し寄せたとみられる回数は以下の通りです。
▽北海道の奥尻島で9000年に20回
▽青森県の五所川原市で8000年に9回
▽秋田県のにかほ市で3000年に4回
▽山形県の飛島で3000年に4回
▽山形県の酒田市で3000年に2回
▽新潟県の村上市で9000年に9回
▽新潟県の佐渡島で9500年に24回
▽富山県射水市で8000年に4回
▽福井県の高浜町で5000年に2回
▽鳥取県の北栄町で6000年に4回
▽島根県の隠岐の島で5000年で3回
▽山口県の下関市で7000年に2回
▽長崎県の壱岐島で7500年に2回。
【NHK】