原子力規制委員会の更田豊志委員長は11日、東京電力福島第1原発事故から10年になったことを受け、規制委の事務局を担う原子力規制庁の職員に訓示した。世界で最も厳しい規制基準と言われている国の新規制基準について「『基準をクリアすれば大丈夫だ』というような新たな安全神話とならないよう注意が必要だ」と訴えた。
更田氏は「原発事故後に規制当局が(国家行政組織法第3条に基づく独立性の高い『3条委員会』として)独立したからといって『規制の虜(とりこ)』の恐れがなくなったわけではない」と指摘。廃炉作業が続く福島第1原発について「発電所の外に危害が及ぶリスクは極めて小さくなった」としつつ「作業の困難さは高まっている。作業の監視や放射性廃棄物の安定保管などに気をつけていく」と述べた。
整備が進んだ原発の安全審査のマニュアル類に関しては「ルール化されたり、型にはめてしまったりすることは、想定外に備えることにとって害にもなり得る。安全を求める闘いのため自ら考え、判断することが不可欠だ」と警鐘を鳴らした。
一方、東電柏崎刈羽原発のID不正利用問題にも触れ「当初の評価が甘く、情報の共有に遅れが生じた」と規制委の対応が後手に回ったことを認めた。「安全面でもセキュリティー面でも、規制の内容が現場に反映されなければ意味がない」と振り返った。
訓示は新型コロナウイルスの感染防止のため、インターネットの動画で中継された。【塚本恒】
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日本政府が米紙ニューヨーク・タイムズに出した東日本大震災後の世界の支援に感謝する全面広告。米国の子どもから寄せられた「私たちは日本と共にある」という言葉が書かれた日米が手をつなぐ絵も掲載した=外務省提供
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日本政府が米紙ニューヨーク・タイムズに出した東日本大震災後の世界の支援に感謝する全面広告。米国の子どもから寄せられた「私たちは日本と共にある」という言葉が書かれた日米が手をつなぐ絵も掲載した=外務省提供
茂木敏充外相は11日付で、2011年の東日本大震災後に世界各国・地域から受けた支援について、「日本国民は、世界の人々の温かいお気持ちと支援を決して忘れることはありません」と感謝する談話を発表した。政府は米紙ニューヨーク・タイムズに、米国など各国の支援に感謝する全面広告も出した。
茂木氏は談話で「復興に向けた支援を通じ、被災地は着実に前に進んでおり、世界との結びつきがこれまで以上に強くなっている」と指摘。一方で「震災後10年を経てもなお日本産食品の輸入を規制する国や地域があることは大変残念だ」と述べ、福島県産などの農林水産物輸入の規制撤廃を求めていく考えを示した。
政府の全面広告では、在ニューヨーク日本総領事館の山野内勘二総領事が英語で「日本が困難な時に多くの国と個人が助けてくれたことに感謝したい」とのメッセージを寄せた。
外務省によると、163カ国・地域と43の国際機関から支援の申し出があり、公的機関だけで毛布やぬいぐるみなど多くの物資や175億円以上の寄付金が寄せられた。赤十字を通じた1000億円以上の寄付もあった。在日米軍は災害救援活動「トモダチ作戦」を展開し、24カ国・地域が行方不明者の捜索などで緊急援助隊を派遣した。【毎日新聞】