東日本大震災後、東京・永田町の首相官邸前で毎週金曜夜に脱原発を訴えてきた市民団体「首都圏反原発連合」が、3月末で休止する。金曜デモを397回行ってきたが、参加者が減少し、資金難になったことが主な理由という。7日には、団体が主催する休止前最後の国会前での集会があり、参加者が「原発はいらない」「再稼働反対」などと訴えた。
集会は、11日に東日本大震災から10年となるのを前に開催し、数百人が集まった。新型コロナウイルス感染防止のため、参加者の検温などの対策をとった。
仙台市出身の高橋智彦さん(29)は、東京電力福島第一原発事故から約10年が経過し、記憶の風化が心配という。「事故はまだ終わっていない、という思いを政治に届けたかった」
東京都大田区の伊藤あき子さん(67)は9年前から金曜デモに参加。コロナ禍でいまは行っていないが、休止と聞き、この日の集会に参加した。「金曜デモを通じて、おかしいと感じたら、政府に怒っていいんだと気づかせてもらった」
12年6月には20万人、首相とも面会したが
首都圏反原発連合は2011年9月、脱原発を訴える13団体が集まって結成された。毎週金曜の官邸前デモが始まったのは、12年3月29日。関西電力大飯原発(福井県)再稼働に抗議するため、数百人が集まった。ツイッターなどSNSで呼びかけると、参加者も徐々に増え、再稼働決定後の同6月には20万人(主催者発表)が集まった。同8月には、メンバーが当時の野田佳彦首相と面会した。
「SNSなどに呼応した個人参加が特徴だった」と、中心メンバーでイラストレーターのミサオ・レッドウルフさん。脱原発の訴えから始まった市民のデモは、安全保障法制や待機児童問題、共謀罪への抗議などへと広がった。
だが、次第に参加者が減った。寄付が中心だった資金の確保も難しくなった。昨年10月、首都圏反原発連合は3月末での活動休止を発表した。金曜デモは今月26日まで実施する。
ミサオ・レッドウルフさんは「脱原発が果たせていない中での休止は非常に心残りがある」と語る。活動休止後も団体は解散せず、ツイッターなどで発信を続けるという。「原発政策で大きな動きがあれば、声を上げていきたい」【朝日新聞】