東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと子どもの被ばくを避ける対策が取られなかったなどとして、当時、県内に住んでいた親子らが訴えた裁判で、福島地方裁判所は原告の訴えを退ける判決を言い渡しました。
原発事故が起きた当時、県内に住んでいた親子160人は、事故のあとの被ばくを避ける対策がとられず精神的な苦痛を受けたなどとして国と県に1人あたり10万円の損害賠償などを求めていました。
原告の親子らは「無用な被ばくを受けその後も健康不安を抱いている」などと主張し、国と県は「無用な被ばくはさせていない」などと反論していました。
1日の判決で、福島地方裁判所の遠藤東路裁判長は、国が「SPEEDI」と呼ばれるシステムで算出された放射性物質の拡散予測を直ちに公開しなかったことは、「当時の国の指針などに定められた運用方法に従ったもので不合理であったとは言えない」と指摘しました。
そのうえで、国や県が子どもたちを直ちに集団避難させなかったことについて、「原発事故当時の防災指針における避難などに関する指標は放射線に対する感受性の強い子どもにあわせて統一されたもので国際的基準に照らしても合理性を有する」などと指摘し原告の訴えを退けました。
原発事故をめぐる裁判の多くが事故の発生の責任を問う中、事故後の行政の対応を問う裁判の判決は初めてで、裁判所がどのような判断を示すのか注目されていました。
判決言い渡しのあと原告団の今野寿美雄代表は、「全くもって納得いきません。裁判所は何を審査したのか。不当判決だと思いました」と話していました。【NHK】