東京電力福島第一原発事故で千葉県内に避難した住民らが国と東電に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が19日、東京高裁(白井幸夫裁判長)であった。一審・千葉地裁は国の責任を否定して東電にだけ賠償を命じたが、高裁は国と東電の両方に同等の責任を認めた。
原発事故をめぐって避難者が国と東電を訴えた集団訴訟は全国で約30件あり、控訴審判決は今回が3件目。国の責任を認めた判決は昨年9月の仙台高裁に続いて2件目で、国の責任を否定したのは今年1月の東京高裁の1件となった。今後、最高裁が統一判断を示すとみられる。
今回の訴訟の一審・千葉地裁判決は2017年9月に言い渡された。一審では18世帯45人が国と東電に計約28億円を求め、千葉地裁は42人に計約3億8千万円を支払うよう、東電に命じた。
千葉地裁は、政府の「地震調査研究推進本部」が02年に公表した地震予測の「長期評価」に基づけば、遅くとも06年までに原発の敷地の高さを超える津波を予見できたと認めた。
ただ、長期評価には様々な異論があり「確度は必ずしも高くなかった」と指摘し、東日本大震災に伴う実際の津波の規模は想定と全く異なったことも踏まえると、「防止策を講じても防げなかった可能性がある」と判断。国が東電に事故を避ける措置を命じなかった対応は「著しく合理性を欠くとはいえない」として国の責任を否定した。
一方、東電については、「避難者が生活の本拠を失った精神的苦痛」などに対する賠償責任を、国の指針よりも幅広く認定。放射線量が高い「帰還困難区域」だけでなく、かつて避難指示が出された区域からの避難者に対する慰謝料も認めた。
東京高裁での控訴審では17世帯43人が計約18億9千万円を請求していた。高裁は長期評価について「相応の科学的信頼性がある」と判断。国は長期評価を公表した1年後には事故を回避する措置を取るよう東電に命じることができたと指摘し、規制権限を行使しなかったのは「違法だ」と結論づけた。
原発避難者訴訟では、地裁では14件の判決が出ており、国の責任まで認めたのは半分の7件と判断が分かれている。【朝日新聞】