運転開始から40年を超えた関西電力の美浜原発3号機(福井県美浜町)、高浜原発1、2号機(同県高浜町)について、福井県の杉本達治知事は12日、再稼働に向けて前向きに検討する姿勢を示した。この日の国や関電との面談で表明した。県は関電に対し再稼働同意の条件として、使用済み核燃料の中間貯蔵施設の県外候補地提示を求めていたが、関電の「2023年末までに確定させる」との提案を受け入れ、課題解決を先送りした。杉本知事は会談後、記者団に「県議会に再稼働に向けた議論を促したい」と述べた。
中間貯蔵施設を巡っては20年12月、電気事業連合会と経済産業省が、青森県むつ市の施設を関電を含む電力各社で共同利用する案を提示したが、同市が猛反発。関電は同月、年内の県外候補地提示を断念し、福井県に「早めに改めて報告する」と伝えていた。
この日は梶山弘志経産相、資源エネルギー庁の保坂伸長官、関電の森本孝社長、杉本知事の4者が面談。森本社長は同施設の県外候補地の提示を「20年を念頭」としてきた方針から「23年末」にする考えを示し、それまでに運転(再稼働)した場合でも「期限までに確定できない場合は、確定できるまでの間、美浜3号機、高浜1、2号機の運転はしないという不退転の覚悟で臨みたい」とした。杉本知事は「県議会での議論など、今後の対応を検討する」と述べ、確定前も含めた再稼働の議論を始める考えを示した。オンラインで出席した梶山経産相は「問題解決に向け官民挙げて取り組んでいく」と述べた。
関電は美浜3号機を21年1月、高浜1、2号機を3月以降にそれぞれ再稼働する工程を示していたが、中間貯蔵施設の提示ができず、予定が崩れている。一方、美浜、高浜両町議会と高浜町長は既に再稼働に同意しており、県の判断が焦点になっている。
中間貯蔵施設確定は23年末に先送り
関西電力は、原発の使用済み核燃料の中間貯蔵施設について、2020年ごろとしていた計画地点の確定期限を23年末に先送りした。今後、40年超の3基を再稼働する判断は福井県の杉本達治知事に委ねられた。
関電は経営面からも40年超原発の再稼働を急ぎたい考えだが、大きなハードルが中間貯蔵施設の福井県外確保だった。20年12月に、青森県むつ市の中間貯蔵施設を関電を含む電力各社で共同利用する案が浮上。しかし、全国の使用済み核燃料の負担が集中することを懸念したむつ市の宮下宗一郎市長が猛反発したため、行き詰まっていた。
関電はこの日、候補地を示すことはできなかったが、23年末までに計画地点を確定する覚悟を示した。経済産業省に加え、原発が立地する福井県高浜町などは40年超原発の再稼働を進めたい考えで、杉本知事が提案を受け入れたのは、こうした声も踏まえたものとみられる。今後は、県議会などで議論され、杉本知事が再稼働を容認するかどうかが焦点になる。
一方、中間貯蔵施設問題を巡っては、18年にも「先送り」となった経緯がある。関電は17年11月、大飯原発3、4号機(同県おおい町)の再稼働に理解を得るため、当時の西川一誠知事に「18年中に県外候補地を示す」と約束した。18年3~5月に再稼働したが、同施設の県外提示については同年12月、「20年を念頭」に先延ばしした。松下照幸・美浜町議(72)は「前回は約束を破られたうえ、再稼働した3、4号機は今も動いている。結局、約束は再稼働を認めさせるための方便だった。行き先の決まらない使用済み核燃料は増えており、40年超原発の再稼働や今回の先送りは認められない」と批判した。【毎日新聞】