2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故について、原子力規制委員会の検討会は26日、19年9月に再開した調査の中間報告書案を公表した。それによると、2、3号機原子炉建屋5階付近に、放射線量が極めて高い設備があると推定される。このため、廃炉が遅れる可能性がある。
汚染が判明したのは、原子炉格納容器の真上で「蓋」の役割を果たす3枚の円形コンクリート設備だ。放射性セシウムの量が2号機で約2京~4京ベクレル(京は1兆の1万倍)、3号機で約3京ベクレルに達すると推定された。放射線量に換算すると、毎時数シーベルトに上る可能性が高く、人が立ち入った場合、数時間で死に至る恐れがある。
東電は22年、2号機の原子炉で溶け落ちた核燃料などの「核燃料デブリ」の取り出しに着手する。作業によっては蓋の撤去が必要になるが、計約465トンの重量と高い放射線量は廃炉を進める上で課題となる。
ほかに、検討会は格納容器の破損を防ぐために放射性物質を含んだ蒸気を大気に放出する「ベント」について検証し、1、3号機で蒸気が原子炉建屋内に逆流したことを突き止めた。テレビ映像の解析から、3号機の爆発が複数回起きていたことも明らかにした。規制委は事故10年となる今年3月に報告書を決定する。
事故を巡っては、政府や国会などの計4委員会が12年、それぞれ調査報告書をまとめた。規制委は委員会の間で見解がずれた点を13~14年に検証した。今回は放射線量が下がった建屋内で放射性物質の漏出経路など5項目を新たに調べた。
◆東京電力福島第一原子力発電所事故=東日本大震災による津波で原子炉を冷やせなくなり、1~3号機が炉心溶融した事故。原子炉建屋3棟が爆発して放射性物質が飛散し、地震や津波の被災者も含めて福島県民が最大16万4865人避難した。原子力事故の国際的な尺度で最悪の「レベル7」と暫定評価された。【読売新聞】