関西電力は25日、福井県にある原子力発電所の使用済み核燃料の中間貯蔵施設について、県外の候補地を示せなかった。運転開始から40年を超える同県内の原発の再稼働について、2020年中に候補地を示すことが再稼働議論の前提とされていた。杉本達治知事は候補地の提示が同社役員らの金品受領問題で失墜した信頼関係を作り直す一歩になると位置づけていたが、まだ道半ばだ。
「(関電が)県外の計画地点を提示することが議論の前提であることは変わらない」。杉本知事は25日夕、記者団に対してこう話した。「早めに説明に来ると言っているので待ちたい」とした上で、候補地について「絵空事でないようなものが前提だ」と付け加えた。
再稼働議論の対象は、稼働から40年を超えた高浜原発(同県高浜町)1、2号機と美浜原発(同県美浜町)3号機。25日昼に福井県庁を訪れた関電の松村孝夫副社長は候補地について「報告することができない」と説明した。応対した福井県の桜本宏副知事は「県として原子力の議論を進めることはできない」と答えた。松村副社長は面談後の報道陣の取材で報告の時期を問われると「メドはない」と話した。
中間貯蔵施設の県外候補地を巡っては、17年11月に西川一誠知事が関電の岩根茂樹社長(いずれも当時)から「18年中に具体的な計画地点を示す」との説明を受け、大飯3、4号機(福井県おおい町)の再稼働に同意した。関電は18年12月になっても具体的な地点を示せず、岩根社長本人が西川知事に謝罪のうえ「20年を念頭に示す」と改めて約束していた。今回再び約束が果たされなかったことになる。
関電と県の関係は、19年に発覚した金品受領問題を機に悪化していた。「地元の信頼は地に落ちた」「まったく言語道断の事態だ」。杉本知事は20年3月末に業務改善計画の説明などに訪れた森本孝社長に対し、厳しい口調で非難した。金品受領について第三者委員会は同月中旬、高浜町の元助役(死去)から受け取ったのは計75人、総額約3億6000万円相当との最終報告を公表していた。
10月に森本社長がコンプライアンス推進を説明した際、杉本知事は「少しずつ進んでいるという実感を得ている」と一定の理解を示した。ただ、既に中間貯蔵施設の提示期限は迫っていた。
中間貯蔵施設以外にも、県の同意判断にはハードルが山積みだ。関電のコンプライアンスの浸透度、地域共生や電力消費地と立地地域を結ぶ取り組み、国の原子力行政の方針の明確化など、福井県が出す条件は多い。関電が立地自治体に対してどのように理解を得ていくかが課題となる。【日本経済新聞】