経済産業省は21日、2050年の総発電量に占める各電源の割合(電源構成)について、再生可能エネルギーを5~6割、水素とアンモニア発電を合わせて1割とする案を、参考値として有識者会議で示した。残る3~4割は原発と二酸化炭素(CO2)を回収・貯留・再利用する火力発電でまかなう。菅義偉首相が掲げる「50年までに温室効果ガス排出の実質ゼロ」の実現に向け、25日にも発表される政府のグリーン成長戦略の実行計画に盛り込む方向だ。
発電部門からの排出は国内の温室効果ガスの約4割を占める。経産省は今後、参考値をもとに、経済効率性や供給安定性などについて複数のシナリオで分析していく。経産省は「(参考値は)政府目標として定めたものではなく、今後議論を深めていくための一つの目安・選択肢」とするが、原発の新増設・建て替え(リプレース)につながる可能性があり、論議を呼びそうだ。
国内の原発は東京電力福島第一原発事故後に廃炉が相次ぎ、いまは36基(建設中の3基を含む)。すべての原発が運転期間を法律で定められた原則40年間とすると、50年には建設中の3基だけとなる。すべての原発に20年間の運転延長を認めても、50年には23基まで減る。有識者会議は原発容認派が多く、「カーボンニュートラル(CO2排出実質ゼロ)の実現には火力と原子力をきちんと活用していくことが重要」「新増設の準備を始めるべきだ」といった声が相次いだ。一方で、「信頼回復がどこまでできているのか」「原発が本当に経済効率的なのか疑問」との指摘もあった。
また、実行計画では原子力が15程度の重要分野の一つに位置づけられることもわかった。小型原発(SMR)の国際連携プロジェクトへの参画や高温ガス炉の試験・実証のほか、太陽の中で起きている反応を人工的に起こす国際熱核融合実験炉(ITER)計画の着実な推進などを掲げる方針だ。【朝日新聞】